表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/124

Episode:67

 念のためだろう、最初に石が落ちてきて、次に太刀が落ちてくる。

「――セレスティアル・レイメント」

 小声で魔法を唱えて発動させると、太刀の落ち方がゆっくりになった。それを上手く待ち構えて受け止める。


 魔法の効果が切れると、ずしりと重い感触が手に伝わった。けどすぐ、牢の隅の暗がりへと押しやる。このまま持っていて、教官に取り上げられるのはイヤだった。

 けど肝心の教官はなかなか戻ってこない。どうも階段を上がりかけた辺りで、通話石で誰かと話してるみたいだ。


 耳をそばだてる。

「……あ、そうですか、じゃぁまだ……ええ、こちらは大人しいです。代わりに収監が効いたかと」

 要するに教官、あたしが牢の中で大人しくしてると言ってるんだろう。


 ――好きでやってるわけじゃ、ないのだけど。

 教官も言ってる通り、イマドを身代わりにするって言われてなきゃ、こんなとことっくに出てってる。


 話は続いてるみたいだった。

「え? では捕らえていないのですか?」

 教官の意外そうな声。予想外のことが起こってるらしい。


「……それだと、8年生のトップ陣は軒並みですか。ずいぶん逃げましたね」

 8年生と言ったらあたしたちのことだ。そのトップ陣って言ったら、あたしと同じAクラスの誰かだろう。これだとイマドやシーモアは、上手く逃げおおせたかもしれない。


「ええ、はい。こちらは大人しいので、捜索に行けるかと。分かりました」

 どうやらこの教官、ここを留守にして誰かを探しに行くみたいだ。


 話の続きに聞き耳を立てる。

「大丈夫です、身代わりの話が効いてますから。ええ、ですから早く、彼を捕らえた方が」


 しめた、と思った。

 この言い方だと、たぶんイマドは逃げ出してる。しかも全く捕まえられなくて、応援が呼ばれたみたいだ。


 これならあたしがここを逃げ出しても、代わりにイマドを収監なんて出来ないだろう。むしろここを逃げ出して暴れたほうが、イマドが捕まる率が減るはずだ。

 教官が応援に行くまでは大人しくしてて、そのあとここを破壊することに決める。


「まったく、てこずらせて」

 ぶつぶつ言いながら教官が戻ってきた。そして牢の中を覗き込んで言う。

「少し席をはずすが、大人しくしてるんだぞ」

「……はい」


 なんでそんなことをあたしに言うんだろうと思いながら、素直に返事だけはした。早く行ってもらうにはそのほうがいい。

 教官は満足そうに頷くと、牢から離れる。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ