Episode:65
◇Rufeir
高い窓から差し込む光が弱くなって、牢の中が今まで以上に暗くなってきた。
なんでこんなところに居るのか、いまだに自分でもよく分からない。一応「麻薬の所持」ってことになってるけど所詮痛み止めだし、許可はきちんと貰ってる。
それにただそれだけを言うなら、上級隊の先輩達だって引っかかるはずだ。
やっぱり麻薬云々は言いがかりで、要はあたしを閉じ込めておきたいんだろうなと思った。
ただ、ここをうっかり出られないのが困りものだ。
出ること自体はそんなに難しくない。錠はあたしでも開けられる単純なタイプだし、施錠の魔法がかけられてても解けるから問題ない。イザとなったら鉄格子ごと破壊したっていいだろう。
でも教官は、あたしが逃げたらイマドを代わりに収監する、と言ってた。
だから迂闊に動けない。イマドの安全が確保されないうちは、ここから出るわけにはいかない。
――それにしても。
考えれば考えるほど腹が立ってくる。
あたしを収監したのはまだいい。何の意図か知らないけどどうにでもなるし、実家から圧力かければ二度とやれないはずだ。
けどイマドは違う。あたしみたいに後ろ盾なんてないし、ここ以外に行く場所も無い。だから学院の言うことを聞くしかない。
そんなイマドまで、なんで巻き込むのか……。
あとで絶対言い出した人を探し出して、苦情を申し立てようと思う。
ただ、今はどうにもならなそうだ。
どういう造りになってるのか、この牢の中だと魔法がいつもより弱まる。だから上手く加減して……というのが難しい。なのに強引に使ったら、地下にある建物の基礎部分を崩壊させてしまいそうだ。
もうひとつの理由は教官だ。
よほどあたしをここに閉じ込めておきたいのか、鉄格子の向こうには常に教官がひとり控えてあたしを見張ってる。おかげで何も出来ない。
もっとも教官は時々離れたところへ行くし、交代もあるみたいだから、その隙を突けば何とかなりそうだ。
あと、丸腰なのもちょっと気になってた。
別に武器がなくたって魔法の威力は変わらないから、その意味じゃ問題ない。けど万が一教官たちと相対するハメになったら、主要な戦力はやっぱり太刀だ。魔法は小回りが利かないから、何をどう巻き込むか分からない。
もうこの状況じゃ巻き込んでいい気もするけど、さすがに最初から「巻き込んで当然」は良くないだろう。
何とか太刀を取りに行ければいいのだけど、ちょっと望み薄だ。
やっぱり今度からは学院内でも持っていようと誓う。




