Episode:61
と、ぽんと手を打ってナティが言った。
「それって要するに、人質がいなくなっちゃえばいいよね」
「……アンタ、ミルが伝染ったかい?」
あまりに突拍子も無い話に、ついそんな言葉が口を突いた。
「人質いなくなったらって、あの子たち居なくなったらまずいだろうが」
「あーごめんごめん、そーゆー話じゃないの」
ナティが手を振って慌てて言い訳する。
「要するにさ、人質がいるから困るわけじゃない?」
「そりゃそうだけどさ」
そんな分かりきったことを、なんで今更言い出すんだか。けど当人は大真面目だ。本気でミルの吹っ飛び加減が伝染ったかもしんない。
で、ナティがさらに大真面目で続ける。
「人質がいて困るんだもん、なくしちゃえば、って言ってるの」
「だからなくしたら困るだろうっての。あの子たちに何かあったらどーすんだい」
どうもさっきからこの重要なとこがすれ違ってるのに、なんでナティがこだわるんだか。
けど次の一言で、あたしは思わず動きが止まった。
「違うってば、逆。人質を解放しちゃえばいいんじゃない」
言われてみりゃそうだ。足かせになってる人質がいなけりゃ、そもそも悩む必要なんかない。
ただ問題は……。
「あんたの言ってること正しいけどさ、ナティ、それどうやるのさ」
「んー、そこはほら、考えてみないと」
やっぱこいつ、ミルが伝染ってる。
あたしの表情に気づいたんだろう、ナティが口尖らせた。
「もう、シーモアったら。人のことそんな顔で見なくたっていいじゃない」
「見たくもなるよ。見通しも無いのにアイディアだけ言って得意になってるんじゃ、ミルと変わらないじゃないか」
「あ、それもっとヒドい」
そういう辺りが更にミルに似てるの、本人は気づいてないんだろか?
けど学院長のほうは、そう思わなかったらしい。
「確かにナティエスの言うことは一理ありますね。何より、あの子たちの開放は最優先項目でしょうし」
「ですけど、あたしらだけじゃどうにもなりませんよ? 先輩たちでも呼んでくりゃ別ですけど」
「そうですね……演習島への連絡手段は分かりませんが、本島内ならある程度できるかもしれません」
学院長の思いもかけない台詞。
「ホントですか?」
「確約は出来ませんがね」
そう前置いて、学院長が説明する。