Episode:51
何より仮に敵襲だとしたら、先輩たちにいち早く連絡が行くわけで。ついでに戦力になるルーフェも同時に召集だ。
けど、あの子が呼び出されたのは、おやつ食べてたときの話だ。それが今は暗くなってるわけで、かなり時間が過ぎてる。
しかもルーフェ、部屋に太刀を置きっぱなしときた。ホントに戦闘が迫ってるんなら、これはさすがにあり得ない。
あたしはそれをナティに指摘した。
「もし敵襲だとして。だったら教官たち、演習島から先輩たち戻して、その他にルーフェも呼ぶだろね。なのに先輩たちは戻ってきてない、ルーフェにいたっては丸腰ってんだから、何か別の話じゃないか?」
「そっか……半日過ぎてからチビちゃんたち集めて、なのに先輩たち戻ってないんじゃ、防御にならないもんね。というか呼び出された話がバトルなら、ルーフェだって太刀取りに来るはずだし」
「そゆこと」
ただそうなると最初に戻るけど、教官たちなんであんなマネをしてるかってことだ。ルーフェを呼び出して戻ってこれない状態にして、しかもチビたちはご飯時に一斉に集めてとか、理由が分かりゃしない。
おんなじように首かしげてたナティが、ひとりで二、三度頷いて言った。
「ともかくさ、このまんまじゃ埒明かないよね。なんかしなくちゃ」
「だね。ただまぁ、最初は情報収集かね……」
何がどうなってんだか分からないから、動きようも無い。
ナティが暗くなった空を仰ぎながら、指折り数えた。
「今分かってるのってやっぱり、ルーフェが武器ナシで居なくなっちゃったっていうのと、チビちゃんたちが集められてるのと、それだけだよね」
「だと思うよ。せめてイマドでも居りゃ、もちっとなんか分かりそうなんだけどね」
なんせイマドときたら、人間の基準から見事にズレてるわけで。
けどそのせいかアイツだんだん、索敵とか逃走が得意になってきてる。このまま行ったら上級隊に入る頃にゃ、とんでもなく上手くなってそうで怖いくらいだ。
逆に言うと、あいつがその気になったらかなりの情報が手に入る。
「ねぇシーモア、アーマルたちイマドに会えたかな?」
「どうだろね。でもあいつらだったら、会えてんじゃないかな。どうしても必要なら、イマドのほうから出てきそうだしさ」
ナティ相手に、気休めなんか言わない。そんなの言う必要もない。むしろ言ったら、逆にケンカになる仲だ。
ナティが笑った。
「だよね。イマドってそういうヤツだし。で、どする?」
その時、どっかで爆発音がした。