Episode:48
まぁいくらこの先輩でも、みすみす捕まって身動きできない可能性のほうが高かったら、選ばないと思うが……。
当の先輩のほうは平然とした調子で答えた。
「だからヘーキだってば。どうせ手は出せないから。まぁそれでも、なるべくこっそりやるけど」
「そうなんですか……」
言っている主旨は何となく分かるが、やっぱり心配だ。
そんなリティーナの気持ちを見透かしたのか、先輩がクスクス笑う。
「大丈夫大丈夫、まず先に『教官は実は手を出せない』って広めとけばいいんだし」
ミル先輩を敵に回すことだけは、絶対にやめようとリティーナは誓った。
確かにこの先輩、普段の言動はおかしい。だがさまざまな道具を転用していくあたりは、どれも全く予想がつかなかった。だからこんな先輩を敵に回したら、絶対にタダでは済まないだろう。
「センセが帰ってきたら、あたし通話石と動映機持って行くね」
「え? 先輩だけですか?」
自分も一緒に行くのだと思っていただけに、リティーナは慌てた。
「こういうの、人数多いほうがいいんじゃないですか?」
「あたしもそう思います。だって講堂、集められてる人数凄く多いし」
リティーナの友達、ニネットも似たようなことを言う。けれど先輩は譲らなかった。
「だーめ。あなたたちには違うことやってもらうつもりだし」
「そうなんですか?!」
ちょっと声が弾んでしまったのは、重大な仕事を任されたからだ。責任があるというのはミスができないけど、逆に言えば何でも自分のやり放題だ。
先輩に訊いてみる。
「あの、そしたらあたしたち、何を?」
「連絡係♪」
極上の笑顔で先輩が微笑む。
「お願いね」
「はい!」
さっきより更に声が弾んだ。
少し形は違うけれど、これは立派な任務だ。
「えっと、そしたら、ホントにあたしたち何を……あ、いえ、連絡係は分かりました。でも誰とですか?」
「んー、逃げ回ってる人たち全員かな。なるべく多く探して、この通話石を渡してあげて欲しいの」
「は、はい」
予想以上に大変そうだ。けれどここで出来るか出来ないかを天秤にかけてしまったら、きっと一生出来ない。
そうやってるところへ、ムアカ先生が戻ってきた。