Episode:45
「なるほど、言われてみればそうね。まぁ彼らじゃ隠蔽に走り層だけど……」
「いんぺい、ってなんですか?」
難しい単語が出てきて、リティーナは先生に訊いてみた。
「あぁ、ごめんなさいね。隠蔽って言うのはそうね……悪いことを隠して、なかったことにする、って言ったら分かる?」
「あ、何となく」
要するに、クラスの男子が悪さをしたのを隠したりするのと、似たようなことだろう。ただ教官がやるとなると、ちょっと規模が大きそうだ。
(どうせバレちゃうのにな……)
リティーナが今まで見た感じ、隠し通せたものはない。だいたい誰かが見ていて、口止めしてもどこかから漏れて、最後はみんなに知れ渡ってしまう。
「あ、そっか……」
つい口からこぼれた言葉に、先生が不思議そうな顔になった。
「なにが『そっか』なの?」
「え? あ、えっとですね」
考え考え説明する。
「えっと、だから、ウソって、バレたら困りますよね」
「そうね。だから隠すんだろうし」
先生の言葉が、リティーナの考えを裏付けた。
確信を持って言う。
「だったら、みんなでばらしちゃったらダメですか?」
ミルという先輩が突然手を叩いた。
「わぉ、チビちゃんあたしと同じこと考えてる! やるじゃん!」
「そ、そうですか……」
褒めてくれたのだろうが、何か複雑だ。だいいちこれでは、腹黒さを褒められたようなものだ。それにチビちゃんというが、自分とこの先輩とではそんなに年も身長も違わない。
先輩のほうはリティーナの気持ちになど気づかず、嬉しそうにベッドの上で跳ねながら喋り始めた。
「でね、でね。チビちゃんが言ったとおり、バラしちゃえばおっけーでしょ。だからねー、中へ動映機と通話石持って、入っちゃったら面白いよね? ついでにみんなにホントのこと教えたら、もっともっと面白いよね?」
「そ、それはそうだけど」
計画を聞かされた先生が焦る。
「けど、そんなことして大丈夫なの?」
「へーきへーき。何かしたら、それも流しちゃうもん~。『講堂に仕掛けた』って言えば、分かりっこないし」
心底面白そうに、このミルという先輩が笑う。