Episode:42
「でしょ。まぁ他にルートがあったら別だけど。あとは、上手く船に隠れて演習島に行っちゃったとかもあり得るけど。でもこの本島にいる可能性大、と」
「ですね……」
なんだか信用できない先輩だが、話の筋は通っている。
説明はまだ続いていた。
「じゃぁさ、次。なんで学院長、この島にいるのかな?」
「え? それはえっと、逃げられなかったから、とか……」
自分が危ないと分かってたら、学院長だってとっくにどこかへ逃げてるはずだ。けれど先輩は首を振った。
「ざんねーん、ちょっと違うと思うな」
「違うんですか?」
「うん」
何故か先輩は自信たっぷりだ。
そして偉そうに胸を張って言う。
「学院長、ああいう性格だから。生徒だけ置いて逃げるとかしないから」
「あ、そっか」
その点はリティーナにも納得が行く。どうしてと言われても困るが、学院長は自分だけ逃げたりしないはずだ。
ムアカ先生も同意した。
「確かにそうね。学院長はそんなことをするタイプじゃないわ。でも、そうだとしたらどこに……」
「どこにも逃げてないかもねー」
しゃらっと先輩が言ったことがみんな飲み込めず、数秒の間が空く。それからみんなが、あっという顔をした。
「ちょっと待ってミル、つまり学院長は動いてないってこと?」
「んー、わかんないー。けどあたしなら、最初だけ隠れて元の部屋かなー。だから学院長もそうするかなーって」
怖い先輩だな、とリティーナは思った。こんなことをあっさり考え付くなんて、この先輩はよほど悪巧みが得意なのだろう。
ただ先生のほうは、そこまでは思わなかったようだ。
「十分アリとは思うけど、確かめたわけじゃないのね?」
「だってミルちゃん、ここで寝てたしー」
やっぱりこの先輩、時々鋭いことを言っても全体的にはオカシイ。
先生がため息をついた。
「どちらにしても、打つ手ナシかしら……困ったわね」
「えー、ありますよー」
またクスクス笑いながら先輩が言った。