Episode:41
「ミル、あなたの言うことが分からないのだけど。さっきあなた、秘密の場所だって言ってなかった?」
「うん」
そう答えてから、ミルという先輩が何とも言いようのない腹黒い笑顔になった。
「でもあたし、秘密の場所に『いる』なんて言ってないよ? きっとそうだと思う、っては言ったけど」
「あ……」
なんて先輩だろう、とリティーナは思った。たしかにそう言ってはいないけど、こんな言いわけナシだ。
さらに先輩が言う。
「あの教官は、信じちゃったみたいだけど。けどさ、自分で『情報は必ず精査して、デマに惑わされないように』って教えてるのにね」
言いながらクスクスと笑う様子は、まるで小悪魔だ。
ムアカ先生がため息をついた。
「まったく、あなたって人は……でもだとしたら、学院長はどこに?」
「さぁ?」
先輩が首をかしげながら答えた。
ムアカ先生が、また大きくため息をつく。
「本当に知らないのね?」
「知らないでーす♪」
答える先輩は何故か嬉しそうだ。けど先生はそうは行かない。
「あぁもう、これじゃまた振りだしね」
「そうでもないかもー」
先輩が言うのを聞いているうちに、だんだん混乱してくる。
「あの、先輩……」
さすがにリティーナは声をかけた。
「何かなー?」
訊かれて正直に答える。
「何がなんだか、全く分からないです……」
先輩がけろりと答えた。
「うん、分からないと思う」
なんだか力が抜けてくる。分からないのが当たり前だとしたら、いままでの話はいったいどうなるのだろう?
一方で先輩のほうはご機嫌だった。まぁ周囲の全員がやったことに騙されているから、これ以上おもしろいことはないのだろう。だがそれにしたって、こんなことを言うのはどうかと思う。
呆れ顔のリティーナに気づいたのか、先輩が説明を始めた。
「えーっとね、まず学院長はこの島にいる、だよね?」
「はい」
これだけは確かだ。