Episode:04
――言いがかり、かもしれない。
何でそんなことを思ったのかも、教官がそうする理由も分からない。
けどそう思って、ともかく言うのをやめる。
もし……もし本当に言いがかりなら、あたしから持っていると言ったら、それこそ利用される。自分で証拠を出すようなものだ。
それによく考えてみれば、教官はあたしの扱いが色々ふつうと異なることは、ある程度まで知ってる。なのにいまさら言い出すのはおかしい。
やっぱり、持っていることは今のところ、黙っているほうがよさそうだった。
少し考えて言う。
「えっと、学院長に……」
仮にこの教官が知らなくても、学院長はきちんと分かってる。だから学院長に連絡さえ取ってもらえば、すぐ片付くはずだ。
でも返ってきたのは、予想もしない言葉だった。
「学院長には、連絡できん」
思わず首をかしげる。
確かに学院長は、いろいろ用事でシエラを空けてたりする。けど緊急時――シエラは何が起こるかわからない――に備えて、いつも連絡が付くようになってるはずだ。
なのに連絡できないなんて、ふつうの状態じゃない。
「えっと、病気……ですか? じゃなきゃ、会議とか……」
「お前が知る必要はない」
あたしの中で警告ランプが灯る。
具体的に「何が」とは言えないけど、絶対に何かがおかしい。
「ともかく、いいから入れ。上手く行けば、学院長に言っといてやる」
「そんな……」
自室待機ならまだともかく、こんな理由で収監はさすがに横暴すぎる。
けど迷って立ち尽くしてたら怒鳴られた。
「早く入らんか! 入らないなら、減点だぞ」
言ってることがメチャクチャだ。
教官に従わないから減点、それそのものは分かる。けどあたしが麻薬を持ってるかどうかは、今の時点でちゃんと分かってはないんだろう。そうじゃなかったら、「容疑」なんて言わない。
どっちにしても、上手く立ち回らないと大変なことになりそうだ。
「早くしろ!」
「――はい」
気は進まないけど、牢の中へ自分から入る。
「武器は持ってないな」
「持ってません」
食堂で食事してすぐ戻るつもりだったから、珍しく武器は持ってない。でも今度からは絶対持っていようと内心思った。
まぁ今回の場合は、持ってても取り上げられるだろうけど……。