Episode:39
「へーきへーき」
リティーナはニネットと顔を見合わせ、互いに「自分じゃない」と首を振る。
と、隣のベッドの上、毛布がもそもそと動いた。
「じゃじゃーん、ミルちゃん参上ー」
「……ミル、後輩の前であなた、何をやってるの」
呆れた先生がたしなめる。
毛布から出てきたのは薄い水色の瞳にふわふわした髪の人だった。どうやら先輩らしいけど、小柄なせいかあまり年の差がないように見える。
ニネットがびっくりした顔でつぶやいた。
「隣のベッドって、寝てる人いたんだ……」
「んふふ、死んだフリ成功ー」
この先輩、絶対何かが間違ってる。けど当の本人は何も気にしていないらしい。
その先輩が声を落として言った。
「なんか外がわーわーしてると思ったら、ふぅん、副学院長なんだ」
「そういうのだけは、聞き耳立ててるんだから……」
先生がまた呆れ顔で言う。
「だって面白そうだし」
「面白くないわよ、大変なんだから」
先生と先輩とで、よく分からない言い合いが始まった。
「ふぅん、大変なんだー。でも、何が大変なの?」
やっぱりこの先輩おかしい。
「そりゃ、副学院長のことに決まってるでしょう。あとは、学院長が居ないことね」
水色の瞳をくるくるっとさせて、先輩がいたずらっぽい顔をした。
「でもセンセ、今は居ないほうがいいんじゃない?」
「え……あ!」
先生がはっとした顔になる。
「確かにそうよね……学院長が見つからないほうが、今はいいんだわ」
「んふふ、ミルちゃん頭いいー♪」
先輩の言葉を聞きながら、内心「どうなんだろう」とリティーナは思った。確かに頭はよさそうだけど、激しくどこか間違っていると思う。
と、急にまじめな顔になって、この先輩がひそひそ声になる。
「学院長はね、まだこの島にいると思うんだ」
「あ、それ間違いないです」
リティーナは答えた。
「ほんとに?」
「ほんとです」
もう一度短く答えてから、先輩に説明を始める。