表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/124

Episode:37

 そしてリティーナは、最後の一言を言った。

「それにおじさんだと、足が痛いから遠くは辛そう」

「――こりゃ一本取られたな」

 怒られるかと思ったが、またおじさんは笑った。


「確かにお嬢ちゃんの言うとおりだ。私じゃ坂道を登りきる前に見つかって、営倉に入れられてしまうか」

 ひとしきり笑ったあと、おじさんが真剣な顔になる。


「私が言った話は覚えてるかな? 副学院長のことだ」

「はい、覚えてます。学院を乗っ取ろうとしてる、って話ですよね」

 このくらいも覚えられないようでは、シエラのAクラスには居られない。

 おじさんが頷いた。


「うん、その通り。そうしたら、それをムアカ先生に伝えて欲しい。落としたときのことを考えると、メモなんかは渡せないから、しっかり頼むよ」

「はい」


 話が重大だ。自分が間違えたら大変なことになる。

 まぁ話が単純だから、そう簡単には間違えそうにないが……。


「そしたら、行ってきます」

「あ、待ちなさい」

 引き止められて立ち止まると、おじさんが黒っぽい布を持ってきた。


「この布を羽織っていきなさい。もう日が暮れてるから、かなり見つかりづらくなると思うよ」

「ありがとうございます!」

 たしかに制服の上にこの布を被って暗がりに隠れたら、そう簡単には見つからないだろう。

 黒と思った布は受け取って羽織ってみると、暗い緑色だった。確かにこれなら、夜は見つかりづらそうだ。


「えっと、行ってきます」

「うん、頼むよ」

 おじさんに送られて、暗くなった外へと出る。


 見上げると、星が綺麗だった。それに今日は満月で明るいから、足元もそんなに苦労しなくて済む。

 だが坂を中ほどで来たところで、向こうから来る人影を認めた。

 慌てて脇の茂みに身を寄せる。


「全く、生徒は足りないわ、イマドは逃げ回って捕まらないわ、あいつらと来たら……」

 ぶつぶつ言いながら教官が坂を降りてきた。


 船着場のおじさんに知らせに行こうと思わず体が動いたが、踏みとどまる。ここでやたらと動いても、状況が悪くなるだけだ。それにあのおじさんなら、きっと上手く切り抜ける。

 息を潜めて、教官の姿が遠ざかるのを待つ。動くなら十分に離れてからだ。


「ともかく、あのイマドがいちばん問題だな。あれを何とかしないことには、捜索に手が取られてたまらん」

 しめた、とリティーナは思った。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ