Episode:35
少女は必死に考え、もうひとつのやり方を思い出した。
「そしたら、通話石……」
すぐ思いつかなかったのは、下級生は私用で使うことが禁止されているからだ。だが返ってきたのは、信じたくない言葉だった。
「私もそう思ったんだが、繋がらないんだ。さすがに相手も、そのくらいはお見通しらしい」
「そんな!」
これでは連絡のしようがない。
「どうすれば……」
「ともかく、学院長が無事かどうか確かめないと。――あぁいや、無事だと思うよ」
リティーナが泣き出しそうになったからだろう、おじさんが慌てて付け加えた。
「ほんとですか? 学院長、無事なんですよね?」
「いや、私も確かめてはいないんだが――でももし学院長に何かあったなら、それ以上は探さないと思わないかい?」
「あ、そっか」
おじさんの言うとおり学院長を捕まえたなら、副学院長たちはわざわざ探したり、生徒達を集めたりしないだろう。
「そしたら、学院長探さないと」
「そうなんだが、どこにいるか分からないからね。かといって、ヘタに探し回って教官たちに見つかってもまずいし」
どうやら、そう簡単な話ではないようだ。
「このまま、何にもできないの?」
「いや、ムアカ先生には知らせられる。これから何とかして行くところだよ。カーコフ先生にも知らせたいが、こっちは演習島だから厳しいな。下級生もなんとかしないといけない。教官たちの配置も調べないと。それからもちろん、学院長の居場所に――」
「そんなにいっぱい?」
やることの多さにくらくらしてくる。どれかひとつだって大変だ。
おじさんが優しく笑ってリティーナの頭を撫でた。
「そうだね、いっぱいだ。けどひとつずつ片付けていけば、そのうち終わるさ」
「あ、そですね」
確かにおじさんの言うとおりだ。順番にやっていけば、どんな問題集だって終わる。
「えっと、じゃぁ最初は、学院長?」
「いや、知らせるほうかな」
おじさんの意見は、リティーナには納得がいかなかった。
「でも、早く学院長、探さないといけないんでしょう?」
「うん、そうだね。けどいまこの島の中には、教官がたくさん居る。だから1人じゃ危ない」
「あ、そっか……」
何しろシエラの教官たちだ。上級隊でも一対一で勝てる人は殆ど居ない。悔しいけれど兄も勝てない。
ましてや自分では、ひとたまりもないだろう。