Episode:31
◇Lytina
もうひと頑張りすればごはん、そんな時間で、リティーナはうきうきしていた。
「今日はなにかな~?」
つい独り言が口を突く。
この部屋は2人部屋だが、今日は誰もいなかった。
アウトドア派の同室の同級生は、どこかへ出かけたままだ。きっと直接食堂へ向かうのだろう。
まだ低学年で同級生と同室というのは、実は珍しい話だった。
低学年はたいてい上級生と部屋が一緒だ。そうでないと細かい日常生活で、いろいろと滞ることが多い。
だが寮は無限に部屋があるわけではないし、上級生も無限に居るわけではない。だからたまに、こういう組み合わせも起こる。
もっとも部屋の少女2人にしてみれば、何故そうなったかはどうでもよかった。同級生同士で気楽でいい、ただそれだけだ。
時間がたつのが待ち遠しい。その時間になれば、相部屋の友達も帰って来る。
だがそこで、通話石を通して連絡が入った。
『下級生は全員、講堂へ集合せよ』
「そんなぁ」
思わず通話石に言い返す。それから「向こうに聞こえない設定でよかった」とリティーナは思った。
少女の見たところ、シエラの教官には2種類居る。
ひとつは学院長やムアカ先生のように、生徒が大好きな人だ。こういう人たちは一緒に居て安心できるし、生徒にも納得できないようなことは言ってこない。
そしてもうひとつは、すごく偉そうにしている人だ。こっちはちょっとでも言い返すと大変なことになるし、いつも納得できない事を命令する。
いま通話石を通して命令してきたのは、きっと偉そうにしているほうだろう。だからもし聞かれてたら、どれだけ怒られたか分からない。
『繰り返す。下級生は全員、講堂へ集合せよ』
命令を聞きながら、何かおかしいと思った。
リティーナが学院へ来てそろそろ4年になるが、こんなことは初めてだ。しかもこれから夕食というときになんて、どうにも納得が行かない。
しかも「下級生」と言っている。これは上級生以外全員で、つまり今この島に残っている生徒全員、ということになる。
「理由くらい、教えてくれたっていいのに……」
それでも行かなければ減点だ。だから少女はしぶしぶながら部屋を出る。
廊下は生徒でごった返していた。しかも口々に不安や不満を言っているから、すごい騒音になっている。