Episode:03
「ここ、ですか?」
「そうだ」
教官が先に下りていって、首をかしげながらあたしも続いた。
階段は石造りで、かなり古い感じだ。シエラ創設の頃からあったような気がする。
階段の終わりは、どう見ても牢屋だった。
こんなものがあったんだと、感心しながら覗き込む。
けど、なんでこんなところに、あたしを案内……?
「ここは昔、まだこの島が学院じゃなくて傭兵の養成所だった頃、手に負えない連中を放り込んだそうだ」
「歴史があるんですね」
そういうことだとすると、ざっと200年は前だろうか?
教官は何故か呆れたような顔をしながら、説明を続けた。
「穴を掘って脱走しようとしたヤツもいたらしいが、何しろ島だからな。逃げようがない」
「ですね」
そういう意味じゃ、囚人を収監するのに向いてるだろう。
「あとここは、結界が張ってあるそうだ。だから魔法は使えない」
「そうなんですか?」
ちょっとこっちは信じられなかった。
魔法を完全に無効化する結界なんて、そう簡単に作れるものじゃない。それにメンテナンスしなきゃ、だんだん効力が無くなってしまう。
この辺の事情を考え合わせると、仮にあったとしても、あんまり効果は高くないだろう。
と、教官が背筋を伸ばして、急に威圧的な視線になった。
「ルーフェイア=グレイス」
「はい」
呼ばれて思わず返事をする。
それにしてもこんなところで、あたしに何のようなんだろう?
「お前を収監する」
「しゅうかん、ですか……?」
言われた言葉は短かったけど、意味を飲み込むのに時間がかかった。
「しゅうかんって、ここに入れ……です、よね?」
「そうだ」
「えっと、えっと、理由を……」
こういうとき対処法はどうだっただろうかと、一生懸命頭の中のページをめくる。ともかく、理由は訊く権利があったはずだ。
「理由か? 麻薬の所持疑惑だ」
「え……」
確かにあたしはその手の薬を持ってる。でもちゃんと学院長には理由を説明して、許可ももらった。
だいいち今までだって普通に持ってイザって時は使ってたのに、いまさら急に「ダメ」って言うのもおかしい。
けどそのことを教官に言おうとして、ふと思った。