Episode:26
辺りを見回しながら、暗がりを伝って進む。
まだイマドは逃げ回ってるらしくて、時々小さい爆発なんかの音が聞こえてた。どうも寮のさらに先、島の奥のほうで追いかけっこしてるらしい。
「すごいな、イマド」
「だよなぁ。教官たちがみんなで追っかけてるのに、それから平気で逃げてんだもんなぁ」
実戦経験が豊富なルーフェイアに首席こそ譲ったけど、それまでトップ独走だっただけのことはある。というか、逃げ回るだけならイマドのほうが上かもしれない。
それでも何度か見回りらしい教官の姿は見たけど、物陰に隠れてやり過ごした。
「食堂の裏って言ってたよな」
「言ってた。ちょっと茂み入ってみるか」
崖のそばの茂みの中へ、気を付けながら入ってみる。
「うわ、こうなってたのか」
ヴィオレイが茂みの向こうを覗き込んで声を上げた。
「おい、聞こえるだろ」
「あ、ゴメン」
あんまり悪いと思ってなさそうな声でヴィオレイが言う。
「まったく、気をつけろよ……教官に見つかったらヤバすぎるって」
言いながら、俺も隣へ並んで覗き込んでみた。
「なんだこれ、坂道?」
ヴィオレイじゃないけど、俺も思わずそんな言葉が出る。
崖はデルピスが居た辺りと違って、かなり切り立ってた。けどよく見ると岩肌のでっぱりが、上手い具合に坂か階段みたいになってる。幅はさすがに広くないけど、気をつければ大丈夫だろう。
「ここ、道なりに降りりゃいいのか」
「そうだと思う」
落ちないように後ろ向きになって、崖にぶらさがるみたいにして大き目の出っ張りに降りる。
あとはそう難しくなかった。ジグザグにこそなってるけど一本道を、気をつけながら降りるだけだ。
「あれじゃないか?」
何度目かの折り返しを過ぎたとこで、ヴィオレイが俺に言った。
「他に、それっぽいのないしさ」
「そだな」
もう少し先、崖にぽっかり空いた洞窟が見える。
近づいてみると一部は中まで水が入り込んでたけど、ちゃんと歩ける岩場もあって、奥に確かに船があった。
けど。
「これ……僕たち使えない気がする」
「俺もそう思う」
見つけた船は手漕ぎだった。