Episode:25
「何とか上級生たちに知らせてやりたいが、私ひとりではな……小屋を空けたら怪しまれてしまうし」
要するにこれ、俺らに「知らせに行け」って言ってるわけで。
だったらあとは、船の場所だ。そしてきっと、このおじさんは教えてくれるはずだ。
「隠した船が見つかったら困るが――この岩場の先といっても、ここから直接は行けないし、やつらもさすがに気づかんだろう」
頭の中で思い浮かべる。
イマドがよくデルピスと遊んでる岩場の先は、行き止まりだ。渡れる岩がなくなって、崖だけが続いてる。
「あの先にある洞窟は、岩場からも上からも見えないしな。斜面が他より緩くて降り易いが、まさかやつらが降りたりしないだろうし」
へぇ、と思う。あの先岩場の先、いつも見てただけの場所。そこが実は上から降りられるなんて、ぜんぜん知らなかった。
「しかも降りるのが、食堂の裏手からだからな。分かるわけがない」
確かにかなり見当違いの場所だ。いくら岩場の先だって言っても、まだ管理棟の手前になる。なのに管理棟の更に先から斜めに降りるなんて、このおじさん以外知らないんじゃないだろか。
「まぁ、降りるやつなどいないだろうがな」
言っておじさんが肩をすくめた。
「まったく、何が副学院長だ。前からいけ好かない男とは思っていたが、この期に及んであんなことをしでかしおって……」
おじさんはそのあとも何呟きながら、小屋のほうへ引き返してった。
ほっとして、大きな岩に背を預ける。
一緒に居たヴィオレイも、俺と同じように並んで座った。
「どうする?」
「行くしかないだろ」
他に方法があるんなら、俺のほうが訊きたい。
「けどさ、もし罠だったら」
「その時考える」
俺の答えに、コイツが深いため息をついた。
「アーマル、もう少し考えたほうがいいんじゃないかな?」
「考えたってしょうがないって。それより、ともかくやってみたほうがいいだろ」
「そりゃそうだけど……」
呆れ変えるヴィオレイを横目に、立ち上がって歩き出す。
「お、おい、ちょっと待てよ」
「待たないって。それより、一緒に船、捜しにいかないのか?」
「あ、行く」
ヴィオレイも立ち上がった。