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Episode:24

 でもじーっと聞いてるうち、ほんの少しだけ分かってきた。

 ここから見てるかぎり、船着場の人はちょっと嫌そうだ。何度も首を振ってて、そのたびに教官が大声を上げる。


(もうちょっと前行かないか?)

(そうだな)

 内容が聞きたくて、そろそろっと前へ出る。その時、足が滑った。


「っ――!」

 声は必死に抑えたけど、潮溜まりに突っ込んで盛大に水音が立った。

「誰だ!」

 教官が振り向いて、こっちへ歩き出す。


 俺は岩にはいつくばったまま動きを止めた。暗いのと少しくぼんだところに入り込んだのとでまだ見つかってないけど、時間の問題だろう。

 その時、海の中から波を割って、大きな姿が躍り上がった。


 ――デルピス。

 たぶん、イマドが可愛がってるやつだ。そいつが空中で一回転して、水しぶきを上げてまた海の中に沈む。


「なんだ……」

 教官はすっかり勘違いしたみたいで小屋のほうへ引き返して、二言三言船着場の人に言うと、坂道を校舎のほうへ引き上げてった。


(だいじょぶか?)

 小声でヴィオレイが訊いてくる。

(あぁ。でも驚いた)


 絶妙のタイミングでデルピスがジャンプしてくれなかったら、絶対見つかってたはずだ。

 なんだか身体から力が抜けて、そーっと元の岩陰へ戻る。

 と、船着場のほうから人が近づいてきて、岩の手前で止まった。


(み、見つかったんじゃ?)

(見つかってると思う……)

 ここで教官に知らされたら、一巻の終わりだ。


「誰かいるのかね?」

 声をかけてきたけど、答えるなんて出来るわけない。

 俺らがそのまま黙ってると、おじさんは明後日のほうを見ながら喋りだした。


「ふむ、勘違いか。それにしてもあの連中ときたら。本当に岩場の先に隠した船が、見つからなくてよかった」

 ヴィオレイと顔を見合わせる。

 独り言にしちゃ内容がヘンだ。だからこれは、きっと俺らに聞かせる気で、独り言風に言ってるんだろう。


「あいつら、訓練島に知らされたくないから船のカギを全て寄越せなぞと言いおって。これじゃ迎えにも行けん。通話石も切りおったし」

 なんだか分からないけど、状況はよくないらしい。少なくとも本当と訓練島は、分断された状態みたいだ。






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