Episode:23
「ともかく、聞いてみよう」
また石を拾って、次々落とす。意味は「太刀、ある」だ。
また稲妻の応答。「落として」だった。
「お、落としちゃっていいのかな?」
「ルーフェイアがそういうんだから、だいじょぶだろ……」
心配だけど、大事な武器が傷つくようなマネ、あの子がするとは思えないし。
たすきがけにしてた上着を、片手で何とかはずす。足場が悪くて捕まってないと危ないから、どうにも不便だ。
「ちょっと、中から太刀出してくれよ」
「分かった」
俺が押さえてる上着リュックの中から、ヴィオレイが太刀を引っ張り出す。
「じゃぁ、まず石落として、それからそのまま中」
「了解」
俺の言ったとおりに最初に石が落とされて、次に太刀が押し込まれた。
「平気かな……」
「たぶん……」
なんでか俺まで息を止めて、中の様子に耳をそばだてる。けど、太刀が床にたたきつけられる音はしなかった。
そしてまた稲妻で、「ありがとう」。
「よかった、ルーちゃんちゃんと受け取れたんだ。さすがはルーちゃんだ」
ヴィオレイがひとりで納得する。
俺も胸を撫で下ろしながら言った。
「降りようぜ、今度は先輩たちに知らせないと」
「あ、そうだった」
登るときよりずっと時間をかけて、慎重に崖を降りる。だから最初の言わばに戻ったときは、だいぶ時間が過ぎてた。
「こんな時間に、船出してくれるかな」
言いながら歩いてく。けど船着場へ出ようってとこで、俺は気づいた。
「ヴィオレイ、隠れろ」
「え? う、うん」
変なこと続きのせいだろう、ヴィオレイが俺の言うことにすぐ従って、手近な大岩に隠れる。
船着場のとこには教官が居て、連絡艇を任されてる人と何かを話してる。
「何話してんだ?」
「知るかよ」
自分だって聞こえてないのに、分かるわけがない。
でもじーっと聞いてるうち、ほんの少しだけ分かってきた。