Episode:22
「なんで鉄格子?」
目に入ったものが理解できなくて、口から言葉になってこぼれる。
「これじゃまるで、牢屋じゃん」
「てか、最初から牢屋かも……」
2人で首ひねりながら中を覗いたけど、真っ暗で何も分からなかった。
「ちょっと呼んでみようよ」
「ダメだって! もしここが牢屋で見張りが居たら、バレちゃうだろ」
「あ、そっか……。けどじゃぁ、どうするんだ?」
俺はそれには答えないで、辺りを探って石ころを拾い上げた。
鉄格子から手を差し入れて、中へ落とす。
「なるほどなぁ。アーマル案外、頭いいじゃん」
「案外は余計だっての」
実言うと、この間ケンディクで会えた親戚のじいちゃんから教わったやり方だ。昔、掴まった仲間たちに合図するのに、こういう方法を使ったんだって言う。
もう1個落としてしばらく待つ。
「うわっ」
「すげ……」
突然俺らからそう遠くないとこで、小さな稲妻が閃いた。それが2回。
「これ、魔法だよな」
「うん、間違いない」
つまり中に誰か魔法が得意なのがいるわけで、たぶんルーフェイアだ。
また石ころを拾って、何個か落とす。けど今度はただ落としただけじゃない。
「それ、信号か?」
「習っただろ」
船乗りなんかが使う、光とか音の長短の組み合わせで伝える信号は、けっこう便利だ。んで、これは必ず学院生も習う。というか習ってちゃんと覚えないと、前線出たときがヤバい。
そして今送ったのは、「無事か」って問いかけだ。
少し待ってると、また稲妻で応答があった。
「えーっと、ルーフェイア、無事、やっぱル……」
「しっ!」
叫びそうになったヴィオレイを慌てて黙らせる。
当人も俺の声で気づいたみたいで、はっとした顔で口を噤んだ。
「太刀、渡さないと」
「ああ」
でも覗き込んだ中は、やっぱりよく見えない。ただどうも、窓の位置がかなり高いとこにある感じだった。
「これじゃ、差し入れても落ちるな……壊れるかも」
「それはダメだろ」
ヴィオレイの言うとおりだ。大事な太刀が折れたらヤバい。