Episode:21
「あの穴、地下室じゃねーかって、イマド言ってたよな」
「言ってた。見に行こうぜ」
周りに気をつけながら物陰から這い出して、講堂を離れる。
遠くじゃ、なんか人が叫んでるのが聞こえてた。発砲音までするから、教官たちが相変わらずイマドを追っかけまわしてるらしい。
「――イマド、完全に遊んでんな」
「だなぁ」
しかも暗くなってるから、完全にイマドに有利だ。
何でか知らないけど真っ暗闇でも行動できるあいつと、明かりがなきゃ動けない教官たちとじゃ差がありすぎる。いくら今夜が月が大きくて影が落ちるほどでも、勝負になんかならない。
ちょっとだけ教官を気の毒に思いながら、また船着場へ坂を下りて、更に脇の岩場へ出る。
「見えるか?」
「何となく……あそこだよな」
記憶を頼りに崖を探して、穴らしいとこを指差す。
「けっこう、高いんだな」
「けど、登れそうじゃないか?」
崖っていっても、けっこう岩棚とかでっぱりがある。気をつけていけば大丈夫そうだ。
「えーっと、太刀なんとかしねーと」
「あ、俺ヒモある」
アーマルがポケットから、細いヒモを出した。
「何でこんなもん持ってんだよ」
「授業でほら、エプロン作るってただろ? それのヒモ」
だからってポケット入れなくていい気がするけど、今はそれで助かってんだから文句は言えない。
「これだけじゃダメだな……あ、これ使えるか。悪いけどヒモ切るぞ」
「いいよー」
制服の上着を脱いで、太刀を包んでヒモで縛る。それから袖口どうしも残ったヒモで縛り合わせて、斜めに背負えるようにした。
「へぇ、上手いもんだな」
「こーゆーのは得意だし。行くか」
手近な岩に手をかける。
「だいじょぶか?」
「平気っぽい。でも場所によっては滑るぞ、気をつけろ」
2人で声を掛け合いながら、ちょっとづつ登ってく。
崖は下から見てた以上に割れ目とかでっぱりがあって、予想よりは登りやすかった。月が明るいのもあって、思ったよりは危なくない。
たぶん30分くらいかけて、俺らは目指す穴へたどり着いた。