Episode:19
「だから、それじゃ遅いっつってんのに」
嘲笑いながら駆けてくイマドを、教官たちが追ってった。
「ぼ、僕たちも行かないと」
「やめとけ」
焦るヴィオレイを止める。
「け、けどさ」
「オレらが行ったら、足手まといなだけだって」
俺の一言で、ヴィオレイも思い出したらしい。はっとした顔になる。
「そ、そうか、そうだっけな」
「そゆこと」
イマドは人の行動を先読みするから、アイツが本気になったら誰も捕まえらんない。なのに俺らがついてったら、足引っ張るだけだ。
辺りはしんとしてた。
物陰からそーっと様子伺ったけど、誰もいないみたいだ。きっとイマド追っかけて、教官たちみんな行っちまったんだろう。
そろっと出てみる。でも夜風がそよぐだけで、やっぱり誰も居ない。
「どうする……?」
おんなじように出てきたヴィオレイが、不安そうな表情で言う。
「どうするって言っても……」
俺もヴィオレイも考え込んだ。
ルーフェイアが居なくて、イマドが追っかけられてて、低学年が集められてる。これだけは分かってるけど、どうすりゃいいのかが分からない。
「低学年、何とかしなきゃだよな」
「ああ。あと、この太刀渡さないと。頼まれたし」
「んじゃ、ルーちゃんの居場所見つけないと……」
少しやることが見えてくる。
「そしたら、ともかくルーフェイア探してみようぜ。あと、低学年だな」
「うん。あーでも……」
ヴィオレイが考え込みながら言った。
「先輩達、呼んだほうが」
「何で?」
意味が分からなくて訊き返すと、また考え込みながらこいつが言う。
「よく分かんないんだけどさ……今、先輩たち居ないだろ?」
「まぁ、演習だしな。――あ」
ヴィオレイの言いたいことを理解した。
「絶対おかしいことが、先輩たちの居ない間に、だもんな」
「うん。狙ってるだろ? だったら先輩たちに知れたら、困るんじゃないかな」
一理ある。てか、きっとそうだ。