Episode:16
「地面でも掘って、隠れてんのか?」
「知るか。てか、ルーフェイアの反応すっげー弱ぇ。こんなん初めてだ」
「……どーゆー頭してんだお前」
こんな謎台詞言うヤツ、イマド以外絶対居ない。
けど当の本人は聞いてなかったみたいで、俺らに構わず歩き出した。
「どこ行くんだよ」
「探すに決まってんだろ」
ぶっきらぼうな言い方は、こいつの怒ってるときの特徴だ。
「待てって、落ち着けよ」
いつもイマドのヤツ冷静なのに、今日は俺らが止める側になる。
「何でだよ」
「いやだって学院、様子おかしいぜ? なんかこう、上手く言えないけどいつもと違うっつーか」
「………」
イマドが黙って、何かを聴くみたいな顔になった。
こういうとき大抵こいつは、音じゃないものを聴いてる。俺らには聞こえないものを、イマドはいつも情報源にしてた。
「……確かになんかヘンだな。静か過ぎる」
「上級生がいないからじゃ?」
ヴィオレイが横から口挟んだ。
「今日は泊りがけで演習だろ。だから本島、人口少ないよ。食堂とか図書館とか、ガラガラだったし」
「いや、そゆのと違う」
イマドが言い切る。
「何が違うんだ?」
「チビどもが大人しいんだよ。ありえねー」
オレはヴィオレイと顔を見合わせた。たしかにおかしい。
低学年のチビどもと来たら、普段だって大騒ぎだ。ましてや上級生がいないとなれば騒ぎ放題、毎年大変なことになってる。
なのにそいつらが大人しいとか、天地がひっくり返るような話だ。
「あれだな、用心して帰らないとアブないってヤツか」
「ああ」
3人で今度は用心して、辺り伺いながら校舎のほうへ戻る。
人が多そうなとこへは近づかないよう気をつけて、俺らは様子を伺った。
「やっぱ静かだよな」
「だね……」
いつも何となくワーワーしてる校舎なのに、今日はやたらと静まり返ってる。
「こっちだな」
イマドがつぶやいて、講堂のほうへ回ってった。