Episode:121
(けどねぇ……?)
理由としてはしっくりくるのだが、それが今の地位とお金を捨てるに値するのだろうか?
最後まで首をかしげながらミルは通話を切り上げ、個室を出たミルは今度は窓に取り付いた。
小さな通気窓をそっと開けてみる。
顔の高さの窓は、出ようと思えば出られそうな大きさだ。だがミルはそれはせず、手だけ出して窓の外を探った。
(あったあった)
壁とは違う感触を得、それを引っ張る。
引っ込めた手についてきたのは、まず糸だ。そして手繰り寄せていくと、けして大きくない布の袋が現れた。
(ゲットゲットー♪)
中身は例の動影機だ。
それをスカートの中に隠し、銃はベルトで肩から提げて上着を羽織って、やっとミルは出てきた。
「あーよかった。間に合わなかったらどうしようと思った」
「――いいから早く戻れ」
「はーい」
呆れ顔の教官を尻目に最初とは別の、トイレ近くの列へ座る。
「こ、こら、そこじゃないだろう!」
「今日はお腹の調子が悪いからここ! てか、こんなこと言わせないで!」
テキトーなことを言い放つと、教官は呆れ顔で、だがそれ以上言わなかった。言ってもムダだと思ったのかもしれない。
(失礼しちゃうー)
ぷりぷりしながら周囲の様子を覗う。
疲れ切った様子で座り込んでいる生徒達。だがその中で、本当に少しずつだが、囁きが増えているようだ。
(いけるかな? うん、いけるかも)
ふふ、とミルはほくそえんだ。