表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/124

Episode:120

 ミルとしてはそんな騒ぎは無視していいんじゃないか……などとも思うが、世の中そうは行かないらしい。

 まぁそのおかげでコトがやり易いのだから、文句はないのだが。

 それからミルは通話石を取り出した。


(誰か居るー? ミルちゃんだよー)

 小声で話しかけると、すぐ応答が来た。


(ミルドレッド、無事でしたか)

(あ、がくいんちょーだ。はーい、ぶじでーす)

 そして外の教官に気づかれないよう、らしくないてきぱきとしたやり取りで、彼女は状況を聞きだした。


 曰く、同じクラスの生徒はけっこう教官の手を逃れたようだ。ルーフェイアも脱獄したと言うし、イマドも逃げ回っているとか。シーモアとナティエスは学院長と一緒だし、アーマルとヴィオレイにいたっては訓練島にまで行っている。


(みんな楽しそうだなぁ……)

 仲間たちが聞いたら抗議しそうなことを思いつつ、さらに状況を聞く。

 そしていくらかのやり取りで、首謀者は副学院長らしいことと、どうもお金が絡んだらしいところまで聞き出した。


(……うーん?)

 よくある理由だが、どうも引っかかる。

 今回の一連、上級生が泊りがけの演習のときを狙ったりルーフェイアを投獄したり、下級生を一堂に集めたりと、一見すると用意周到だ。


 だが、そもそもの目的がピンとこない。

 仮にお金が必要だとして、なぜ学院を乗っ取る必要があるのか。乗っ取って学院長職を交代するにしても、他校は納得するのか。交代したとして、学園は維持できるのか。


 だいいちお金が必要だとしても、シエラ本校の副学院長だ。けして薄給ではないはずだし、転職すればもっと高給取りになれるだろう。

 その他も考えれば考えるほど、メリットよりデメリットのほうが多い。


(こんなじゃ、ふつうはやらないよねぇ……)

 ミルの知る限り、人は自分にとって何らかのメリットがあるときしか動かない。


 ただその理由が多種多様で、他人のために動くことが楽しいからというメリットだったり、お金が欲しいだけだったりするから、複雑に見えるだけだ。

 だとすると、副学院長のメリットはなんなのか。


(何かぜったい、隠してるよね)

 一見お金か名誉欲しさに見せかけて、実際の理由は違う。その線がいちばんありそうだ。


 ――あるいはこの騒ぎそのものが、ただの茶番か。

 それにしてはやっていることが大掛かりな気がするが、絶対に「無い」とも言い切れない。何よりそう考えると、出来そうも無いことを始めたことに納得が行く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ