表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/124

Episode:116

「そちらはどうですか? ――え、船が? ではすぐには戻れませんね……」

 カーコフ先生の話が聞こえないから分かりづらいけど、どうも演習島、船が無くて戻れないみたい。


 ――どうしよう。

 これだと頼みの綱の先輩たち、せっかく気づいても戻ってこれない。それじゃ気づいてないのと変わらない。


「なるほど、そちらへ行っていた先生方は、もうこちらに向けて演習島を出たと」

 今だってどうにもならない状況なのに、これで教官増えちゃったら……。


 演習島へ行った教官たちのうち、どのくらいが副学院長の味方なのかは、実際にはわかんないと思う。

 けど間違いなく学院長派のカーコフ先生は、取り残されちゃってるわけで。それを思うと、ほとんどは副学院長の一派なんじゃないかな? って気がする。


「そうなると面倒ですね……船が調達できればいいんですが」

 学院長の声もちょっと暗かったり。当たり前だけど。

 その時、シーモアが隣ではっとした顔になったの。


「どうしたの?」

「いや、船あるかも。――学院長、訓練島は?」

 シーモアに言われて、学院長も「あっ」って顔になる。


「確かにあそこには、船が――カーコフ先生、今のは聞こえましたか?」

 通話石の向こうの先生に、学院長が訊いた。

 答えは聞こえないからわかんない。けど学院長の表情から見て、向こうも同意した感じ。


「ええ、ええ。行ってみる価値はあるかと。訓練島を預かる彼も、私の友人ですし」

 学院長が「彼」って言うのは、訓練島の船着場に居るおじさんのことかな? だったら先輩たち、来られるかも。


「ええ、あとは……」

「静かに!」

 学院長が言いかけたとこで、シーモアが低く鋭く言って。


(どうしたの?)

 小声で訊いたら、彼女が低く答えた。

(誰か来たっぽい)


 思わず身体が硬くなる。だってここに誰か来るって、隠し通路が見つかった、ってことだもの。

 学院長が小声で状況を知らせて、通話をやめる。


 それからあたしたち、黙りこくって耳をそばだてた。

 しん……と静まり返る通路の中、確かに遠く、何かがガタガタいう音。靴音にも聞こえる。時々何かが反響したみたいな音は、声なのかな?


 どっちにしたって、悪い知らせ。ここはあたしたち以外居ないはずなんだから、物音がすること事態おかしいんだもの。

 ただずーっと聞いてたら、少しずつ遠くなってった。ここ全体が迷路みたいになってるから、どこをどう行けばいいのか分からないんだろうな。


(移動しましょう、こっちです)

 通話を打ち切った学院長を先頭に、あたしたち狭い通路を歩き出した。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ