Episode:113
「そういえば彼には、娘さんが居ましたね」
「え、じゃぁ誘拐?!」
「それだ!」
勢い込んで言ったあたしたちに、学院長が苦笑。
「まぁ無いとはいいませんが……可能性は低いでしょうねぇ。そうではなくて、確か娘さんが何か、生まれつき大変な病気らしいんです」
「え……」
これは予想外。
「じゃぁ、その治療費ってヤツじゃ?」
「あるかも」
ベタすぎる話だけど、案外そういうのって多いもの。
ただ、ホントにそうだとすると……。
「なんか副学院長、許せないかも」
あたしの言葉に「分かる」って顔でシーモアがうなずいた。
けど、学院長は不思議そうな顔。
「何故です?」
少しだけ間を置いて、シーモアが答えた。
「だって学院長、あたしらがそんな病気になったって、誰も助けになんか来やしないよ」
学院長がはっとした顔になる。
シーモアは言い出したら止まらなくなっちゃったみたい。
「そりゃ、自分の子供が可愛いのは分かるけどね。そのためにあたしらこんな目に遭うのかい? 何が教師さ、あたしらのこと一山幾らで、自分の娘と引き換えてるだけじゃないか」
言いすぎ、とは思わなかった。だってウソじゃないもの。
あたしたちを、その娘さんより可愛がって、なんては言わない。言わないけど、もうちょっと考えてほしい。
みんな家もなくて親もなくて、でもまぁいいかなってやってるんだから、そっとしておいてほしいのに。
しばらく間をおいて、学院長がため息みたいな声で言った。
「……気持ちは分かります。確かに理不尽ですから。けれど今は、そこは後回しにしましょう。低学年を何とかするほうが先です」
「――はい」
あたしもシーモアも、この話はここで終わりに。だって学院長困らせたかったわけじゃないし、低学年をどうにかしなきゃいけないのはホントだから。
「それにしても、副学院長が何考えてんだか確かめたいね。」
「うん。もしお金とか病院なら、案外ルーフェに言ったら何とかなっちゃうかもだし」
自分で言ってから、あっと思う。
◇お詫び◇
お休みを頂いてしまい、申し訳ありませんでした。
ほぼ体調がもどりましたので、ペースを戻します。またよろしくお願いします。
◇お知らせ◇
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またこれとは別に、異世界トリップの連載も始めました。
こちらはなろう内に掲載です。よろしくお願いします
◇あとがき◇
新しい話を読んでくださって、ありがとうございます♪
前作とは一転、みんな揃っての大立ち回り……の予定です
【夜8時過ぎ】の更新です、たぶん。よろしければお付き合い下さい。
感想・評価歓迎です。お気軽にどうぞ