Episode:110
「ムチャ言わないでください学院長。というか、連絡取れないんですか?」
「連絡ですか……先ほどの通話石で、誰か出ますかね」
学院長が思い出したみたいに、通話石いじった。
あたしたちも耳そばだてながら、黙って隣で待つ。
「――おや、ムアカ先生。これをお持ちでしたか」
シーモアと2人でガッツポーズ。だってこれでだいぶ違うもの。
学院長は、ムアカ先生と話してる。
「ええ、何とか無事ですよ。おや、そちらにも生徒が居ますか」
話からすると、講堂行かずに済んだ子が他にもいるみたい。
「おや、ミルドレッドが講堂に? 連れて行かないほうがいい気がしますが……」
今度はシーモアと2人で肩すくめた。あの子を連れ込むなんて、教官たち何考えてるのかな。
というか、どう考えたって自殺行為。ぜーったい引っかきまわされて予定が狂って、ヒドい目に遭うの間違いなし。
「こちらにも2名ほど居ますよ。助けてもらってます」
それから学院長、だいぶいろいろ話してから通話を切った。
「何か分かりました?」
「ええ。ただ、予測とあまり違いはありませんね。一部に確証が取れたというだけです」
そう前置いて、学院長が話し出す。
「騒ぎの首謀者は、残念ながら副学院長で間違いなさそうです。あとあなたたちと同じAクラスは、だいぶ逃げ出してるようですね」
聞きたかったことが次々と学院長の口から出てきて、ちょっと嬉しいかも。
「そうそう、ルーフェイアも脱獄したあと、ムアカ先生のところに顔を出したようですね」
「わ、やっぱり無事だったんだ!」
思わず手を叩いちゃった。
もちろん、あの子に何かあったなんてぜんぜん思ってない。でも「無事」っていう知らせを聞くのって、思ってるだけとは重さがまるっきり違うもの。
「ルーフェイアとイマドが自由に動ける状態では、教官たちは振り回されるでしょうねぇ……気の毒に」
学院長ったら、なんだか同情してる。
まぁ言いたいことは分かるんだけど。でも困らされてる相手に同情とか、ちょっと納得いかない。
「でも学院長、あの2人が引きつけてくれたら、相当楽じゃないですか」
シーモアに訊かれて、学院長が頷いた。
「ええ。ただ演習島から他の教官たちが帰ってくる可能性もあるので、あまり時間はなさそうですね」
「え、それ大変!」
思わず声が大きくなって、慌てて口を押さえる。