Episode:109
「カレアナでしたら、事情を話せば少しは出してくれそうですしね」
「学院長……」
なんだかため息。まぁ学院ってばお金ないから分かるけど、それにしたって。
そしたら学院長、あたしのこと見て笑って言ったの。
「分かっていますよナティエス、ルーフェイアは被害者だと言いたいのでしょう?」
「です」
だってルーフェったら、思いっきり巻き込まれ。はっきり言って、何にも悪いことしてない。なのに牢屋壊して請求って……。
ただあの子お金持ちだから、平気な顔して出しちゃいそうだけど。
「それにしてもルーフェ、どこ行っちゃったのかな?」
あたしが言うと、シーモアが肩をすくめた。
「分かりゃしないよ、あの子の行き先なんて。だいいちあの子じゃ、島内どこだって行けるだろ」
「確かに……」
さすがに島外へは出てなそうだけど、あの子じゃ野宿だってへっちゃらだろうし。
「ま、牢から出たなら心配ないさ。上手くやるよ、ルーフェなら」
「そうだね」
口でそう言いながら、でも意外だったな、と思った。
何しろルーフェ、大人しい子。教官に逆らうとかあり得ない。だから牢にも入ったんだろうし。なのに逆らって派手に壊して出てくとか……何があったんだろ?
後で会ったら、絶対訊いてみよう。
それからあたし、学院長のほう向いて。
「このあとどうするんですか?」
いちばん肝心なこと訊ねてみた。
この隠し通路に居る限り、あたしたち安全だと思う。でも逆に言うと、なーんにもしないままってワケで。それはちょっと、面白くないしプライド許さないし。ルーフェほどにはいろいろ出来ないのわかってるけど、ただ隠れてるだけって言うのもつまらないし……。
「そうですねぇ」
学院長がちょっと下向いて、魔光灯で伸びた影が揺れた。
「いちばんの懸案事項は、低学年の子たちですからね。あの子たちを解放しないと。ただ、そのためには最低限、上級生に帰って来てもらわないとなりませんね。戦力が足りません」
あたしも学院長の言うとおりだな、って思った。
講堂の後輩達は、絶対なんとかしてあげなくちゃダメ。ただそれでも、教官たち相手に上手くいくかどうかは微妙。数が多いのは有利だけど、教官たちが本気出したらどの程度かがわかんないし。
そう考えちゃうとちょっとため息。あたしたち本当に大丈夫なのかな?
ただシーモアは、そこまで悩んでないみたい。
「そしたら、演習島にでも知らせに行きます?」
けろっとして、そんな無謀なこと言ってる。