Episode:104
「アイツのほうが俺より強いですって」
面白くなさそうなのは、言っていることが事実だからだろう。
もっとも、イマドが平均より劣るわけではない。むしろ平均よりかなり上だ。ただルーフェイアは文字通り桁違いで、同級生の追随を許さない。
――知ったことではないが。
当人同士の関係など、お互いで決めれば済む話だ。他人が口を突っ込む必要はないし、当人たちも合わないと思うならさっさと別れればいい。
ただこのカップルは肝心のルーフェイアが何も分かっていないから、話がそこまで進むかも怪しいのだが……。
いずれにせよイマドの一連の話から、副学院長とその一派がルーフェイアを危険視していたことは分かる。
(まぁ妥当な判断ですか)
上級生が大規模な演習で居ない今、ルーフェイアたちが本島では最年長だ。その中でもトップの実力を持つ彼女は、マークされて当然だろう。
同時に、恐らく同じAクラスの面々も危険視されているはずだ。現にイマドは追い掛け回されている。
だが話を聞く限り、危険視されているメンバーはかなりが掴まらずに済んでいるようだ。それもルーフェイアが居なくなって探していたためというのだから、皮肉な話だった。
(いずれにせよある程度、同級生たちで連携しているようですね)
ルーフェイアを収監したという牢が、ありきたりの物のわけが無い。加えて武器も取り上たはずだ。またイマドや他の同級生の身の安全と引き換えに、くらいのことを言った可能性もある。
それでも脱獄しているのだから、ある程度の情報をルーフェイアは得ているはずだ。恐らくは掴まらずに済んだ友人たちの誰かが、その辺りを手引きしたのだろう。
(甘いですねぇ)
なんでもそうだが、やるなら徹底的にやらないとダメだ。今回の場合ならまずイマドをはじめルーフェイアの友人たちを何人も収監し、それで脅してルーフェイアを捕まえ、一緒におしこめるくらいしないと、何かの弾みで逃げ出される。
そういった手間を惜しんでルーフェイア1人を牢へ入れて済んだと思うようでは、最悪に備えているとは言い難い。
(実際、見事に逃げ出されましたしね)
教官たちはご自慢の場所へ閉じ込めたつもりだったのだろうが、ルーフェイアに常識は通用しない。自身への影響が無いのをいいことに、精霊を呼んだ上で同時に魔法くらいは簡単にやってのける。もし何もさせたくなければ、足かせとして誰かを一緒に収監しないとダメだ。
(これで教える側だというのだから、教わるほうがたまりませんね)
少なくとも生徒の考えを上回るくらいのことは、してほしいところだった。
「あなたはどうするのです?」
いろいろと考えつつ、戯れに後輩に聞いてみる。