Episode:01
◇Rufeir
テストも終わって、あとは春休みを残すだけの昼下がり。あたしはみんなと、食堂でおやつを食べてた。
中は珍しく、人の姿が少なめだ。きっと上級生が、大規模な演習をしてるからだろう。
「やっぱおじいちゃんのケーキ、美味しいよね」
「うん」
「……ルーフェ、味分かってないかもー?」
なんかひどい事を言われる。
「でも、美味しいし……」
「じゃさじゃさ、何入ってるかルーフェ知ってる?」
「え……」
答えに詰まった。
「ほら、やっぱ分かってなーい」
「ミル、それ味が分かってないのと、少し違うってば」
ナティエスがフォローしてくれたけど、これはこれでなんか微妙な言い方だ。
「ほらあんたたち、騒ぐのいいけどお茶冷めるよ」
「あー!」
慌ててミルがカップに口をつけて、今度はヘンな顔をした。
「あっつーい!」
「そうかい?」
「だよねぇ」
シーモアとナティエスは平気な顔してるけど、ミルは猫舌だったみたいだ。
「あつい! ぜーったい熱いってば!」
「熱くなくちゃ美味しくないだろ」
「それ違う、シーモアがヘン!」
「なに言ってんだい」
いつもの軽快なやり取りに、つい可笑しくなる。
「あー! ルーフェ笑ったな!」
「え? あ、えっと、そういうわけじゃ……」
慌てて言い訳しようとしたその時、通話石が鳴った。
「あれ、呼び出し?」
「そうみたい……」
でもいい加減授業は片付いてるし、だいいち先輩たちと一緒に教官も演習島だから、呼び出す人が居ないはずだ。
「何だろね?」
みんなで首を傾げる。
と、ミルが手を叩いて立ち上がった。