終戦伝達班 ①
集合時間の十七時半に成りました。
案内人を先頭に『終戦伝達班』の十組、三十人が次々と「マダンの陣地」に戻って来ました。
金田さん、徳丸部隊長代理、緒方軍医長と教会の神父の四人が長机の上に地図を広げ、報告を聞いています。
「ご苦労サマ。また明日もよろしくお願いします。次、川口サン(元・上等兵)の班、どうでした」
川口さんが報告します。
「はい。此処から西に十キロ程行った所に彷徨兵を二人を見ました」
「居たッ?・・・」
「はい。二人はジブン達を見ると、急いでジャングルの中に逃げて行きました。ジブンは、『待ってくれ!』と呼び止めたのですが・・・。彼等が逃げて行った方向に『戦争は終わったぞ』と全員で数回、叫びました。ですが受け入れてくれたかどうか」
金田さんが、
「そうですか。・・・分かりました。他に兵隊に会ったと云う班は?」
片腕の梶田さんが長机の前に来て、
「ジブンも見ました。山の東側です。しかし、やはりジブン達を見て逃げて行きました。ジブン達も大声で呼び止め、終戦を叫んだのですが信じてくれたか・・・。多分、彼等はジブン達を敵の『工作部隊』だと思っているのではないかと。軍服も軍帽も綺麗だし、彼等は痩せ細り見るに耐えない姿ですから」
梶田さんの話しを聞いて、教会の神父が緒方軍医長に小声で、
「伝えたい事を紙に書き、あちこちの樹に貼り付けるのはどうでしようか」
と提案しました。
軍医長は天を睨んで、暫く何かを考え、伊藤衛生兵に、晒し(サラシ)と墨と筆を持って来る様に指示しました。
暫くして、伊藤衛生兵が晒し一反と墨、筆を長机の上に並べてました。




