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第1話  『異世界の森の匂い』

2024/05/25公開



 自分が異世界転生、いや、赤ちゃんから始めていないから転移の方か、まあ要するにネット小説みたいな異常事態に巻き込まれるなんて思っても見なかった。


 転移する切っ掛けも、勇者召喚とか、可哀想だからという神様の気紛れや、神様の眷属を助けたからという理由では無い。

 単に、異世界にマッチングする体質だから、という理由が一番大きい。


 しかも、しっかりと死んでから異世界転移を持ち掛けられた。

 更に言うと、話を持ちかけて来た存在曰く、100年以上前にも転移させられた病死した日本人が居て、ものすごく成果を出したから、二匹目のドジョウを狙ったらしい。 


 その先輩様はどうやら、神様となって、予想以上に活躍して人類の生存圏拡大に多大な貢献をしてくれたらしい。

 俺の体質では、神様になる程のマッチングは無理でも、強者として通用するレベルには改修可能らしい。


 どれくらいの強者かと言えば、精霊10体分? らしい。

 精霊1体で、一度に最大10㌔相当の物質を捻り出せるらしいけど、俺は10倍の100㌔相当まで可能だ。


 考えてみて欲しい。

 その気になれば、2㍑のペットボトル50本の水を一度に生み出せるって事だ。

 50人もの喉を潤せる水を願うだけで出せる。

 しかも、水だけではなく、石や空気も100㌔相当なら一気に生み出せる、って事だ。

 チートだと思うだろ? 


 でも、上には上が居たんだ。

 大精霊と呼ばれるエリアボス相当の上級精霊様は驚きの10㌧出しだ。

 何人分の水なんだよ? 5,000人分だな。


 更にさらに、先ほどの転移先輩神様は桁が違った。

 ちょっと規模の想像が出来ないが、10万㌧を一度に出せるらしい。

 ペットボトルで考えるレベルじゃなくなっている。

 確か、50㍍プールが1100㌧とか1200㌧だったかな? 

 10万㌧って、船の排水量かよ? 簡単に池くらいは造れんじゃねえかよ、って突っ込みを入れたくなるレベルだ。

 もはや、自然現象というか気象レベルじゃないか?

 さすが、神様レベルになるとスケールが違うな。




 さあて、そろそろ、現実逃避は止めよう。


 こっちの世界では立場により、「創造神ザビナオーレ様」だったり、「豊穣を司る女神のスサーシャ様」とか呼ばれる『知的生命発生惑星監視システム』に唆されて、この世界にやって来たは良いものの、ちょっと困っている。


 『知的生命発生惑星監視システム』が人類の生存圏に降ろしてくれた筈だが、どうやら森の中らしく、どっちに行けば良いのか分からない事態に陥っている。


 要するに迷子だな。


 地球に似ている様で違う植生の森なんだが、深い森過ぎて恒星の位置が分からない(太陽と言うと半分間違いになるらしい)。

 

 パッと見て、何かの生き物が活動した痕跡が至る所に在る。

 具体的には、芽吹いたところがことごとく齧り取られている。

 下生したばえも悲惨な状況だ。

 『知的生命発生惑星監視システム』が言っていた、魔獣氾濫の前兆だ。 


 魔獣氾濫の仕組みはこうだ。

 最初に、百年から三百年に一度の間隔で、森に生えている特定の植物の大繁茂が起こる。

 次に、それらを好んで食べる草食動物が一二年で大増殖する。

 最後にそれら草食動物を食べる肉食動物や魔獣が大増殖する。

 増えに増えたところで、大繁茂が終わって、食料連鎖が崩壊する。

 食料を求めて、魔獣が森林から外に出たら、人類の生存域と重なって、魔獣氾濫という名の災厄が勃発だ。



 さて、南東に向かえば良いんだが、どっちが南東だ?

 第一、時間も分からないんで、恒星の位置が分かっても方位に確信を持てるかも怪しい気がして来た。


 うーん、こういう場合、周囲の安全の確保を最優先した方が良い気がする。

 で、早速、パッシブの魔力感知を掛ける。

 うーん、俺の後ろの方、200㍍くらい離れた位置に集団の反応が出た。

 直ぐ近くにも幾つかの反応が有る?


 一瞬で顔色を悪くしながら、慌てて障壁魔法を発動させると同時にパキッという音が4回響いた。

 アッぶねー。森林の殺し屋こと、毒蛇のコブラモドキの魔法を辛うじて回避した証拠の音だ。

 分泌した毒液を固めて、魔法で飛ばすなんて、殺意が濃過ぎないか? 絶殺だよな? 


 ふー、また一瞬、現実逃避してしまった。


 初めてプロのリングに上がった試合並みに舞い上がっている気がする。



 肩に入っている力を抜く様に、肩と首を円運動を心掛けて動かす。

 悪い流れを払拭する為に、ステップを刻んで、体に染みついたリズムを呼び覚ますと、それまで気付かなかった森の匂いが鼻をくすぐった。



 日本の森でも嗅ぐ匂いが基本だが、少しだけ混じるスパイシーな匂い。

 

 これが異世界の匂いなんだろう。


 やっと平常心に戻れた気がした。



お読み頂き有難うございます。

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