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1 国は私に死ねと言うのか

宝石。

地下深く、鉱床から生まれる原石を加工し、その価値を最大限引き出したもの。

同じ種類の原石でも、石ごとの差や加工の種類で生まれる宝石は異なる。

ボンクラが磨けば石ころに、職人が磨けば国宝に。

魔法がある世界でも、いや、だからこそ「宝石」は求められる。

その美しさ、その魔力(ちから)を求めて……



「……私は詩人か?」


いやもう詩人になろうかな?

ジョブチェンジも悪くないんじゃないかな、うん。

詩人、詩人かー。

おひねりで食いつないでいくのも悪くないかなー。

ただ絶対におひねりなんかもらえないと思うけどね。

そもそも私がおひねりとか投げなかったからなー。

そんな余裕ないって。

……はい、現実逃避終了。

どうも、元宝石屋です。

宝石屋というか職人というか。

ただ、もうあんまり宝石屋ってのは言わない方がいいかも。


その理由は、先日私の住む国から発表された法令。

国からっていうか、王からっていうか。

まあ政治興味ないからどうでもいいね。

……興味持ってた方がよかった気はしなくもない。


「王族、貴族以外が宝石を所持、売買、使用することを禁ずる」


ハッハー、私に死ねってことかオイゴラァ!

どーしてこんなことになったんですかねぇ!

宝石屋が宝石売れなくて何すればいいんですかねぇ!?

おかげで私は店たたんで絶賛慟哭中だよクソったれ!!

……そんなこんなで、現在私は荷物まとめて街を出ました。

家賃払えないからね、しょうがないね。

はぁ。

まさか生まれ育った街を離れる日が来るとは。

おのれ祖国……

さて、これからどうしたものか……

とりあえず、この国を離れよう。

え?祖国愛?

知らんな。

失業者に手を差し伸べない国なんぞ嫌いです。

この国がダメなら別の国へ。

多少は苦労するだろうけど、とりあえず行動しなきゃ。

商売する場所が変わってもいいから、またちゃんと店を構えたい。

ということで、いざ隣国へレッツゴー!


「あんた法令聞いてないのか?この大陸じゃ宝石は王族しか扱えないんだよ」


ノォォォォォォォォォ!!

おのれ、おのれぇぇ!

やっとこさ隣国着いたら第一声これか!?

道中けっこう大変だったんですけど!

主に金欠から来る飢えでね!

それなのに、こんなことって!

貴様もか、貴様も私に死ねって言いたいのか!?


「平民だって宝石買いたい人もいるしいいじゃないか!」

「俺忠告したからな、門番にそそのかされたとか言うんじゃねえぞ」


クソッ!

国の犬め!

哀れな失業者に手を差し伸べないなんて!

か弱い女性に慈悲すら与えられないのか!

この世に神はいないのか!!

恨めしい……この世のすべてが恨めしい……!


「あとあんた宝石持ってるんじゃないだろうな?」

「えっ」

「……宝石令だよ、貴族とか王族以外が宝石買ったり売ったり持ってたら犯罪なの」

「   」

「……ほら、帰れ」



数え年18歳。

私は無職になった。

クソがッ!!

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