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コメディ

禁断の恋

作者: ルーバラン

いつもと同じ授業、いつもと同じ先生。はぁあ、退屈。別に生物の授業なんてどうでもいいのに、なんてこんな授業受けなきゃいけないのかなあ。

着任したばかりの女の先生が、今日も懸命に説明している。俺はシャープペンシルを回しながら、ボケッと先生の話を聞いていた。


「人間が子供を生むとき、どうすれば子供ができるか知っている人?」


「セックス」


即答する生徒。顔を真っ赤にして、声を詰まらせてしまう先生……それくらいで赤くならなくても。


「……き、君、そこまではっきり言わないでくださいね。一応真昼間の授業中なんですから」


「夜の授業をベッドの上ですれば」


「そんな隠語を使わないでください!」


「ピーをピーにピーする」


「放送禁止用語使わないでください!」


「社会の窓からこんにちは」


「や、やめてくださいよ! ボクの授業でそんな事言わないでください!」


「男と女がみだらな行為をすること」


「いえ、直接的に言わなければいいというわけではなくてですね! 一応今は生物の授業中なんですから、生物での回答を言ってほしいというのが正直なところなのですが!」


「オスがメスに挿入すること」


「一緒です! そこは卵子と精子が結合してという回答をしてください!」


「ぶーぶー」


「ブーイング受けても、そこは譲れません!」


耳まで真っ赤にしながら、声を荒らげる先生。うぶだなあ。


「……と、それでですね、この精子と卵子には、染色体という物質を持っています。この染色体の中には、赤ちゃんを形作るデータが含まれています。人間の染色体の数は、いくつあるか知ってますか?」


「46本」


「そうです、46本です。よく知ってましたね。22対の常染色体と1対の性染色体が入っています。このうちの1対の性染色体が男になるか女になるかを決定するわけです。この性染色体、男になる要素の場合はXY、女になる要素の場合はXXとなります。また、男と女が精子と卵子を作るとき、自分の染色体から半分ずつ卵子と精子に組み込みます。この染色体を半分にすることを減数分裂を言います」


「ぐーぐー」


「そこ、寝ないでください!」


だって、退屈なんだもん。


「この染色体の数は動物によってさまざまです。例えば、人は46本ですが、豚は40本、チンパンジーは48本、犬は78本となっています。この染色体の数は別に生物の優劣を示すものではなく、ただ種が違うと言うだけです。この染色体の数が大幅に違うと言うのは、種族的に大幅にずれているので、どう頑張っても子供を作ることはできません、逆に、種族的にかなり近ければ、子供も作ることが可能だったりします」


「すーすー」


「もういいですよ、寝てて……な、なのでですね、よ、よくちょっとエ、エッチなゲームなどで、い、犬にエッチ……じゅ、獣姦されちゃってるようなゲームがありますけど、あれでは子供はできませんね」


「うっわ、さいてー」


「授業中になんて会話してんの?」


「ね、寝てたじゃないですか!? 何でそういう会話だけ聞いてるんですか!?」


「純粋な顔したふりして実はすごくエロエロなんだねー」


「あ、先生ってむっつりスケベなんだね」


「む、むっつりスケベ!? ぼ、ボクはむっつりなんかじゃないよ!」


「……ボク?」


「あ、先生ってボクっ子なんだ?」


「あ!? 今まで隠してたのに!?」


どんどん墓穴を掘っていく先生。というか、前からボクと時々言っていたけど……気づいてないのかな。


「犬とやったことあるんじゃね?」


「ドーベルマンとかと?」


「何てこと言うんだ!? ぼ、ボクは犬とはしてないよ!」


『……犬とは?』


「うわあああん……みんなの馬鹿あ!」


あ、逃げた。先生が見えなくなったと同時に、ちょうど終業のチャイムが鳴った。

あの瞬間に逃げたら犬以外の動物とやったイメージがついてしまうんだけど……いいのかあの先生は。








授業後の昼休み、あずさと俺の2人で飯を食いながら、先ほどの先生をネタに話を弾ませていた。


「あの先生っていつもあんな感じだよね。毎回毎回、授業の終わりに泣いて逃げて……狙ってるのかな?」


「いやー、素だろ」


あれを狙ってやっていたら、ちょっと先生を尊敬する。どこまで体を張っているんだと。


「そうなのかなー? あ、私今から小説書かなきゃいけないから、ちょっとノート広げるけど、気にしないでね」


「ああ、そっか。もう文芸部の機関誌を作成しなきゃいけない時期か? あずさ、なに書く予定なんだ?」


「ふっふっふー、聞きたい?」


「や、別に」


「タイトルは、『禁断の恋!』」


聞きたくないのに勝手にしゃべり始めるあずさ。勘弁しろよ。


「エルフと人間の禁断の恋物語! 男のエルフが女の人間に告白して、2人が恋の逃避行をしていくんだ! 寿命も生活も違って、村八分にされながらも2人は愛に生きるの! そして子供が……ハーフエルフの女の子が生まれるんだ。そして第2部では、ハーフエルフと男の人間と男のエルフの三角関係! 子供が大好きな女ハーフエルフは果たしてどちらを選ぶの!?」


……めっさドロドロな恋愛小説ですな。


「そういやさっき先生が言ってたけど、エルフの染色体の数っていくつなんだろな」


「そ、そんなことまで考えなくてもいいじゃん。ファンタジー小説はファンタジー小説で楽しめばいいと思うよ」


「いや! 大事なことだろ! そうやって裏設定を全然考えないファンタジー小説ばっかり増えるから、ラノベなんて駄目だって言われるんだよ。裏設定はくどくど言っちゃ駄目だけど、しっかり考えないと駄目だろ!? それでもあずさ、お前は小説化志望か!」


「わ、わかったわよ。エルフの染色体は人間より2本多い48本……と、これでいいんでしょ?」


「うむうむ……それでいいのだ。そういえば、異種族関ってどんな種がいるんだろな?」


「さあ? あんた、いつもみたいにさくっと調べてよ」


あまり人をあごで使わないでほしいなあと思いながらも携帯を取り出し、検索する……こういうのを尻にしかれているって言うんだろうか。嫌やなあ。


「ちょっと待ってな……ふむふむ、タイガーとライオンで、ライガーと言う子供が出来るんだって。あと、馬とロバでラバ、ケッティだってさ」


「へぇ……結構できるもんだね。禁断の恋が実を結ぶ瞬間! 燃える! この展開はいける!」


梓が壊れてきた、まあいつものことだが。


「あ、でも全部生殖能力は持たず、1代限りしか生きられないんだって。ハーフエルフも一緒だな」


「……はぅ……禁断な恋はやっぱり禁断な恋なんだね。けど、それが燃える!」


いや、不幸だろ。設定変えろよ。


「第2部の始まりはこんな感じ。赤子として生まれたものの、どちらの両親にも似つかず、そして山に捨てられるの。拾ったのは山犬。そして育ったハーフエルフ。たまたま山にエルフと人間の男2人。2人は美しく育ったハーフエルフに求婚するも、山犬こんなセリフを言われるのよ。『黙れ! お前にハーフエルフの不幸が癒せるのか。禁断を侵したがために、親の勝手のために生まれてしまったのがハーフエルフだ。人間にもなれず、エルフにもなりきれぬ、哀れで醜い可愛いハーフエルフだ! お前にハーフエルフを救えるか』」


いや、そのセリフはパクリだろ。ハーフエルフの名前はサンだったりするのか。


「男たちの返事は、『わからぬ、だが、共に生きることはできる』」


「駄目だろ!? お前らはアシタカかよ!」


「いいじゃん、いいものはどんどんオマージュしないと」


「駄目だって! ぱくりとオマージュは違うから! そんなことやるんだったらタイトルは『禁断の恋!』じゃなくて『禁断の行為!』だよ」


「ううん、でも、これじゃインパクトが小さいよね。もっとひねりを加えないと。最後は『バルス!』って言って終わるとか」


駄目だ、俺の意見なんて聞いちゃいない……あずさの良心に期待するしかないか。








……後日、文芸部の機関誌を読んでみた。あずさの作品は、男の人間と男のエルフが結ばれるハッピーエンドで終わっていた。

確かにそれもまたひとつの『禁断の恋』なのかもしれない。

最遊記で、人間と魔族の混血児は生殖能力を持たない。と言う設定がありましたが、この辺が由来なんだろうなあと思ってたりします。


ファンタジーを書く人は、こういうどうでもよさげな裏設定って作ってるんでしょうか?


異世界に迷い込んだ→異世界の結婚した→染色体の数が違い、子供は作れない→Bad end とか?


それでは。

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