楽しみの矢先に
「そういうわけで、週末にみんなで出掛けないか」
「おぉ、いいぜ! 俺としては、お前と如月さんの三人でもいいんだけどな」
「うん、もちろん! 私としては、さなちゃんと光矢クンの三人でもいいんだけどね」
「なんだと!?」
「なによぅ!?」
さなと、ダブルデートの計画を立て。あいと鍵沼を週末の予定に組み込む。
もちろん、ダブルデートだということは伏せてだ。単純に、四人でどこかに遊びに行こうというもの。
ただ、俺とさなはともかく、付き合ってもいないあいと鍵沼をデートと呼んでもいいのか気になるところではあるが……
まあ、どっちでもいいか。
「詳細は追って連絡するが、せっかくの機会だ。四人で遊ぶのもいいだろ?」
「……それも、そうだね」
「いやぁ、しかし真尾から遊びに誘ってくれるなんて。
中学の時は、俺から何度誘っても断っていたあの真尾が!」
いつも四人で行動していることが多いが、考えてみれば休日に四人で出掛けることはなかったな。さなとデートしたり、鍵沼と小鳥遊のデートを尾行したりはしたが……
……さなとのデートをあいと鍵沼は尾行していた。同じ空間ではないが、四人で共に出掛けていたという事実はあるにはあるが。
なぜか感激している鍵沼は放っておいて、視線を感じて俺はあいに視線を向ける。やはり小柄な彼女は、話をするときどうしてもこちらを上目遣いする形になる。
一部の男子の間では、それが人気の一つらしい。小動物みたいな見た目と、さっぱりした中身のギャップがどうとか。
「どうかしたか?」
「そのぉ……四人で遊ぶのは嬉しいんだけどさ。
お邪魔じゃないかな、なんて」
眉を下げ、不安げに聞いてくるあい。……なにを心配しているのかと思ったが、あれか。
あいは、自分たちがいることで俺とさな……恋人同士の二人の仲を邪魔してもらうのではないかと思っているわけだ。
恋人同士……うん、実にいい響きだ。
なるほどあいの不安の正体は、それか。わざわざ俺たちのことを気にしてくれるのは、ありがたくはあるが……
「邪魔に思うなら、お前たちを誘ってないよ。純粋に、四人で遊びたいと思っただけなんだから」
「そうだぞー、せっかくのお誘いなんだから。遠慮するこたぁないって。
なぁ?」
「お前はもう少し遠慮しろよ」
「だね」
「お前ら俺を相手にするときだけ息ぴったりじゃない!?」
ぎゃいぎゃい騒ぐ鍵沼はさておいて。とりあえず、二人を週末の予定に組み込むことはできた。
あいが心配してくれるのは嬉しい。が、癪だが鍵沼の言うようになにも遠慮することはない。
これは、お前たちのためのお出かけ……ダブルデートなのだからな。
「どうでした?」
「ああ、バッチリだ」
二人から離れ、様子を見守っていたさなと合流する。
二人を誘う場にさながいなかったのは、さなは嘘が苦手だからだ。純粋に遊びに誘うならいざ知らず、ダブルデートという建前がある以上必ずボロが出る。なんなら喋らなくてもバレる。
さなと会ったばかりの頃もそうだった。入試トップの座を俺に奪われ、悔しいんじゃないかと鍵沼に聞かれたとき。
そんなことないと言っているその目は完全に泳いでいた。さなは嘘もごまかしもド下手なのだ。
そこがまた、かわいいわけだが。
「ふふ、楽しみです」
「だな」
嬉しそうなさなを見ていると、俺の胸の奥もあたたかくなる。
こんな気持ちは、魔王だった頃には味わったことがなかったな。俺のことを一方的に慕ってくる奴はまあ、いたが……俺から、というのはさなが初めてだ。
その後、いつも通り授業を受けて……いつも通りの時間を過ごした。週末にダブルデートをするからといって、その日の行動がなにか変わるわけでもない。
放課後となり、本来ならば部活動……というところだが、今日は休みだ。なので、特に予定はなく、このまま帰宅することに。
これまで、放課後にはいつも写真部へと顔を出していたから、なんだかなにもなしに帰るというのは新鮮だな。
「いやぁー、なんか今から週末が待ちきれないよ!」
と、子供のようにわくわくを隠しきれていないあいが、声を上げる。その様子を見て、さなもまた笑みを浮かべる。
こうも喜んでくれていると、ダブルデートであることを秘密にしているのが、若干心苦しくもある。
さなの計画では、いい感じのところで俺とさながいい感じに姿を消して、そうすれば自然とあいと鍵沼がいい感じになること、ということだ。
正直、この作戦とも言えるかわからない作戦を聞いた時は、俺はめまいを覚えたものだ。こんなの、わざわざ休日を使わなくても、二人にするのが目的ならば二人を適当に騙して、部屋にでもぶちこめばいいのだ。
もしこの計画を立てたのがさな以外なら、俺はぶん殴っていただろう。
まあ、さなだから許す。頭はいいが、こういうところではポンコツ化するのも、かわいいものだ。
それに、さなの計画通りに動くなら、自然と俺たちも二人きりになれるしな。
「どこに行くかは、さなちゃんが考えてるんだ?」
「えぇ。楽しみにしてて」
「うん、たのし……」
「あー!」
正直さなだけに決めさせるのは悪い……というか不安なので、俺も後々意見を述べるつもりだ。
そんな話をしながら、靴を履き替え、校庭を歩き……門をくぐり、外に出た瞬間だった。
声がした。それはまるで、子供がなにか、探し物を見つけたような声だ。
なんとなしに、そちらを向く。さなとあいもだ。そこには、一人の少女が居た。
それだけではない。なぜか、こちらに駆け寄ってくる。後ろに誰かいるのだろうか、このままではぶつかってしまうが……
「見つけたー、魔王様ー!」
「ぐほっ!?」
俺が道を譲ろうと体をずらすが、なぜか少女の軌道も変わり……飛びつくように……というか実際に飛びついて、俺の腹部に頭が突き刺さった。
こいつ、俺に攻撃してきた……!? というか今、こいつ……聞き間違いでなければ……
"魔王様"と、そう言わなかったか……!?
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