デートの企画
ペンギンショーを終え、お土産店へとやって来た。
外でやっていたペンギンショー、出口をくぐれば館内へ入るが、そこに土産店が設置されており、来る客がほぼみな立ち寄るようにできている。
さなは軽い足取りで、店内に入る。
「うわぁ、お魚ばっかり……!」
「水族館だからな」
魚を見て楽しむ水族館の土産店だ、魚に関する土産が多いのは当然だろう。
その当然のことも忘れて、さなははしゃいでいた。
せっかくだ、俺もいろいろと見てみるか。
「ふむ……」
こうやって、物を品定めするのも新鮮だな。
お菓子にぬいぐるみ、キーホルダー、文具まで……魚の絵柄や形をしたものが、数多く揃えてある。
それに、客も多いようだ。
ペンギンショーを見たあとの客ばかりだからか、家族連れが目立つな。
土産店だし、せっかくなら誰かになにかを買って帰るのもいいかもしれない。
なぐも部長に、小鳥遊、あい……は、さながなにか買うだろうか。
鍵沼……は別にいいか。でも、水族館に行ったって知ったらなんでお土産ないんだとうるさそうだしな。
……そんな中で、さなは一箇所に留まり、なにかを見ていた。
「さな?」
「……あ、真尾くん」
「なにか、気になるものでもあったか?」
「そういう、わけでは……
……なくは、ないですけど……」
と、さなが視線を外そうとして、また見つめ……
チラチラと見ているものがあった。
それは、ペンギンの形をしたストラップ。
ペンギンの顔をかたどったプラスチック製の素材らしい。
それをチラチラと、見ている。
なるほど……
「これが欲しいのか?」
「ま、まあ、かわいいかなと……
変じゃ、ないですか?」
「変などそんなことは、思わないが」
これがかわいいかどうかは、正直人それぞれ、感性それぞれというやつだろう。
さなが言うように、少なくともかわいらしい造形をしているように、俺は思う。
というか、すでにこの場まで来ているのに、今更恥ずかしがることもないだろうに。
「買うのか?
なんなら、またお揃いにしようか」
「ま、真尾くんは、自分の欲しい物を買ってくださいっ」
前回のデートのときに、お揃いのアクセサリーを買ったわけだが。
それと合わせるのも、どうするべきか。
他に気になるものも、別にないしな……
やっぱり、同じ物を買おうか。
無理して買う必要もないが、せっかくの記念だ。それも、さなから誘ってくれた水族館デートの、な。
その後は、両親に適当な菓子箱を。
さなと話し合って、あい、なぐも先輩、小鳥遊、あとついでに鍵沼にも、それぞれ土産を買っていくことにした。
「じゃ、行きましょうか」
昼飯を食べ、ペンギンショーを見て、その後土産を買って……
こうして、館内を回っていく。
なんとも、のんびりとした時間だ。
さなとのデートははじめこそ緊張も大きかったが、こうした時間を過ごしていくうちに、気持ちも落ちついてきたようだ。
そして、この時間の中で改めて思ったこと……
やっぱり、さなと一緒にいる時間は楽しい。
「はぁー、満喫しました」
館内を周り、様々な魚などを見終えた俺たちは、水族館の外へと出る。
どれくらい中にいたのか、日の光が少し眩しい。
言葉通り、さなは満足したかのような笑顔を浮かべている。
この水族館デートはさなが計画したものだが、本人が楽しんでくれたならなによりだ。
さなの場合、相手のことを喜ばせようと自分のことを後回しにしそうな、イメージがあったからな。
「さなが水族館が好きだと知れて、今日は大収穫だな」
「……実は、あいちゃんにアドバイスをもらったんです」
ぽつりと、さなは話し始める。
「そういえば、昨夜はさなのスマホから、あいがかけてきたんだったな」
思い出すのは、昨夜の出来事。
普段はない、さなからの着信。揚々として着信を取ったら、聞こえた声はあいのものだった。
あのときの落胆は、とんでもないものだった。
「昨夜は、あいちゃんとお泊まりしてたんです。
それで、話の流れで真尾くんの話になって……」
なるほど、あいとお泊まりをしていた……だから、あいがさなのスマホでかけてきたのか。
大方、あいの悪ふざけでかけたのだろう。
それにしても、どんな話の流れで、俺の話になったのか。
「なんか、話をしているうちに、だんだん盛り上がっちゃって……
でも、電話をかけたのはあいちゃんですけど、その……
今回デートを企画したのは私で、あいちゃんは電話をかける勇気がない私の代わりに、電話をかけてくれただけで……」
徐々に、声が小さくなっていくが……
その内容は、俺には聞こえた。
あいが電話をかけてきたのは悪ふざけではなく、いわばさなの後押し……
そして、デートの計画を立てたのは、さな本人だという。
俺としては、あいにノリでデートを決められた、という可能性もあった以上、さなが自分からデートを計画してくれたというのは、単純に嬉しい。
「そうだったのか……
なら、あいにも礼を言っておかないとな」
「それで……その、真尾くん」
ふと、さなが足を止める。
それに伴い、俺も少し進んだところで、足を止める。
どうか、したのだろうか。
振り向き、さなの顔を見つめる。
さなの顔は、ほんのりと赤く……その表情は、どこか強張っていた。
瞳は揺れ、じっと俺を見つめてくる。
それが、ただならない雰囲気だと……すぐに、わかった。
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