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転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜  作者: 白い彗星
転生魔王は青春を謳歌する

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手作り弁当



 さなとのデート、舞台は水族館。

 水族館はこれまでに、来たことがなかったから、俺としては新鮮な場所だ。


「え、真尾くん、水族館初めて来たんですか!?」


「あぁ」


 そう話すと、さなはとても驚いていた。

 自分は好きな場所なので何回も通っている……だからこそ、通ったことのない人間がいるとは、思わなかったのだろう。


 俺も、興味がないわけではなかったが……

 機会が、なかったからなぁ。


「だから今日は、さなが連れてきてくれて嬉しい」


「……そう、ですか。

 でも真尾くん、表情が変わらないので、わかりにくいです」


「それは……努力しよう」


 よく、鍵沼にも無表情だとか鉄仮面だとか言われることはある。

 自分でも、わざわざ表情を動かそうとは思っていない。

 とはいえ、無理に無表情を貫いているわけでもない。


 ただ、あまり性格が表に出ないだけだ。

 今も、昔も。


「あ、別に、表情が見えないからどうってわけじゃないんですよ。

 それはそれで、真尾くんの、個性だと思いますし」


「……そうか」


 個性……そう言われたのは、初めてだ。

 対してさなは、表情がよく変わる。


 笑ったり、照れたり、少し怒ったり。

 好きな相手の、表情の一つ一つを見ていると、胸があたたかくなるのを感じる。


「あの、そろそろお腹空きませんか?」


「ん?

 ……言われてみれば、そうだな」


 さなの言葉に、左手首に付けていた腕時計を見る。

 時刻はちょうど正午あたり……

 腹にものを入れるには、いい時間帯だろう。


 昼食を取るとなると……

 一度、外へ出てどこかに食べに行くか。で、まだ見足りなければ再入場を……


「あの、真尾くん……

 実は、お、お弁当を、作ってきたんです」


「……弁当、だと」


 それは、衝撃の一言だった。

 まさか、さなが、弁当を……それも、今日のために?

 俺のために?


「あの、お口に合うか……」


「いや、食べよう。すぐ食べよう」


「あ、は、はい」


 ということで、館内の飲食スペースへ移動。

 二人がけの席に対面で座り、さなは鞄から包みを取り出す。


 それは、なにかを包んだもの……

 そしてそのなにかとは……


「こ、これです」


「おぉ」


 黒い弁当箱だ。

 さなは緊張した様子で、ゆっくりと蓋を開けていく。


「おぉ、うまそうだな!」


「ん……」


 弁当箱には、白飯を始め、卵焼きやウインナー、唐揚げといった、弁当の定番メニューともいえるものが入っている。

 ちなみにその横には、一回り小さな弁当箱。

 これが、さなの分だろう。


 自分の分とは別に、俺のまで作ってくれたということか。


「えっと……お、お口に合うかは、わ、かりませんが……」


 緊張しているのだろう、先ほどと同じ言葉を繰り返すさな。

 蓋を持つその手は、若干ながらに震えている。


 相手に受け入れられてもらえるかわからない、こんな思いを抱えながらも、さなは俺のために……


「あぁ、もちろん全部食べさせてもらおう」


「む、無理はしないでくださいね!?」


 無理だなんてとんでもない……さなの手料理なら、なんだって食べてやろう。

 俺とさなは、それぞれ弁当を広げ、手を合わせる。


「いただきます」


「い、いただきます」


 この飲食スペース、若干数カップルが多い気がする。

 だからだろうか、さなが必要以上に緊張しているのは。

 それとも単純に、弁当の出来を気にしているのか。


 さて……

 俺は箸を手に取り、さっそくおかずを手に取るために狙いを定める。


 最初は……やはり……


「卵焼きを」


「……」


 手を伸ばした先は、卵焼き。

 まずはそれを箸で掴む。おぉ、なんとふわふわした食感……力加減を間違えたら、割れてしまいそうだ。


 なのでゆっくりと、持ち上げて……口へと、運ぶ。

 一口サイズの卵焼きを、一気にパクリ。


「あむ……んん」


「……ど、どうでしょうか」


 不安げな、さなの表情。


「……あぁ、うまい」


「!」


 そんな彼女に、俺は素直な感想を、伝える。


「触った瞬間にふわふわなのはわかったが、口の中で噛んだ瞬間に卵の黄身が溢れてきてな。

 それに、ほんのピリッとした塩味も、実に好みだ」


「よ、よかったです……」


 俺の感想を受けてか、さなはほっとしたように、胸を撫で下ろす。

 他人に、自分の作ったものを食べられるというのは、緊張するものなのだろう。

 俺は料理をしたことないから、わからないが。


 安心したのか、さなも自らの弁当に手を付ける。

 二人とも同じ中身ではあるが、弁当箱の大きさが違うので、量は俺のが多い。


「さなは、それで足りるのか?」


「はい。

 真尾くんこそ、それで足りますか?」


「あぁ、問題はない」


 男だから、これだけ食べるだろうって予想して作ってくれたのか。

 ありがたいことだな。


 それぞれ、どのおかずもうまく、箸が止まらない。

 あっという間に、量が減っていく。


「わ……す、すごいですね」


「ん、そうか?

 うまいから、箸も進むだけだ」


「そ、そうですか……」


 本当ならば雑談でもしながら優雅に食事の時間を楽しみたいところだったが……

 気づいたときには、弁当箱は空になっていた。


 さなは、まだ食べている途中だ。


「うわぁ、本当に全部食べてくれるなんて……

 あ、お茶です」


「当然だ、うまかった……ありがとう」


 さなから、水筒からコップに注がれたお茶を受け取り、それを飲む。

 喉が潤い、さっぱりした感覚。


「嬉しいです」


 コップを返し、さなはうっすらと笑っていた。

 こんなにも嬉しそうにしてもらえると、なんだかこっちも嬉しくなるな。


「ちなみに、どのおかずが一番美味しかったですか?」


「一番、か……

 迷うが、卵焼きかな」


「そ、ですか……卵焼き。

 ふふ」


 一番美味しかったおかず……それを聞いて、またさなは笑みを浮かべ。

 箸で摘んでいた卵焼きを、パクっと食べた。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

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