逆尾行
「おまたせ!
いやー、ごめんごめん、待った?」
「い、いいえ、今来たとこ、です」
「……」
現在、俺は物陰に身を潜め、目の前で繰り広げられる光景を見つめていた。
場所は駅前。多くの人が行き交う中で、俺の注視している二人はそこにいた。
鍵沼と、小鳥遊。年頃の男女が、二人きりで休日に待ち合わせている。
その理由は、一つだ。
「あー、なんだか焦れったいわね。せっかくのデートなんだから、もっと積極的に」
「……」
そんなことを隣で言うのは、闇野だ。
友達の小鳥遊が心配なのか、こうしてここにいる。
「いやまあ、結構おしゃれしてるみたいだしな……」
「そりゃ私がプロデュースしたからね」
自信満々に、闇野は笑う。
そう、今日は小鳥遊の初デート。その相手に、鍵沼が選ばれているのだ。
それを見守るのは、俺と闇野、そして……
「むむむ……」
唸る、あい。
三人が、身をかがめて潜んでいる姿は、不審に思われるかもしれない。
だがまあ、ここまで来てしまった以上、仕方がないことだ。
「……なぜ、こんなことに」
そもそも、なぜ俺は、こんな尾行じみたことをしているのか。
……というかそのものだが。
俺、あい、闇野……わりと珍しいこの組み合わせ。
見守るのは、鍵沼と小鳥遊のデート姿。
「じゃ、行こうか」
「は、はい」
歩き出した二人を追うように、俺たちも移動を開始する。
以前、俺はさなとのデート中、鍵沼とあいに尾行されたわけだが……
まさか同じことを、俺が、とやることになるとは思わなかった。
ちなみに、さなは今日は用事があるらしく、ここにはいない。
さなと一緒にいれないのは残念だが、こんな尾行なんてするさなを見たくもないな。
「鍵沼くん、なんか手慣れてない?
やっぱり、過去に彼女がいたんじゃ……」
「知らん。というか、過去なら別にいいだろう」
見た感じ、鍵沼がうまく小鳥遊を、エスコートしている。
さりげなく道路側を歩いたり、人にぶつかりそうになったらさりげなく守ったり。
鍵沼のくせに。
「鍵沼のくせに……」
そう呟いたのは、あいだ。
俺が考えていたのと同じことを呟いたので、驚いた。
あいはなんとも、表現し難い表情を浮かべている。
どんな感情なんだ、それは。
どこから聞きつけたのか、鍵沼が小鳥遊とデートすることを知ったようで……
『私も行く!』
そう、力強く言ってついてきたのだ。
まあ、俺としては、目的は尾行とはいえ闇野と二人きりなのは避けたかったので、ありがたかったが。
……なんで俺は、ここにいるんだろうな。
そもそも、なぜこんなことに、なっているかというと……
時間は数日前に、遡る。
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