いい光景
写真部に、念願の五人目の部員が正式に入部した。
これで、来年の廃部危機はとりあえず、去ったわけだ。
とはいえ、俺は単なる人数合わせで連れてきたわけではない。
鍵沼に近づくため、自身が本当に写真に興味があるから、まだ部活に入っていなかったから……様々な要因が合わさり、現在に至る。
ちなみに、小鳥遊が写真部に入部するという話になった際、てっきり闇野も乗っかってくると思っていたのだが……
『私はもう別の部活に入ってるし。
あんたがいるってのが心配だけど、他にも部員がいるなら、過保護に心配するほどのことじゃないわ』
と言って、写真部には来なかった。
仮に俺とふたりきりだったなら、部を掛け持ちしてでも入部していただろう。
小鳥遊はさなやあい、なぐも先輩のことを知らないが……あまり心配して、過保護になりすぎるのもどうかと思っていたわけだ。
女子の部員がいるなら、安心できるだろうと。
「それにしても光矢くん、まだ入学から一ヶ月で、ずいぶんきれいな人と仲がいいんですね。
この間の、校舎裏の人とかも」
「ん?」
隣に腰掛けるさなが、話しかけてくる。
校舎裏の……とは、闇野のことか。
俺が闇野を呼び出して、互いに転生者だと確認し合ったあのとき。
そして、今回俺は小鳥遊を連れてきた。
ぱっと見、二人ともきれいだと言われて不思議ではないが……
「仲がいい、とは少し違うな。
たまたま、縁があっただけだ」
「そうなんですかぁ」
闇野とは、前世で魔王と勇者だった間柄。
小鳥遊は、闇野の友達で鍵沼に好意を寄せている。
ただそれだけだ。
その関係を、他の人間には言うことが、できないだけで……
「どうしたさな、なにか不機嫌そうに見えるぞ」
「そんなことないです」
俺の気のせいだろうか。なんでもないと答えるさなは、そのまま小鳥遊のところへと向かっていってしまう。
なぐも先輩が、あいが、さなが、それぞれ小鳥遊を歓迎している。
「なかなかいい光景だな」
俺は一人、つぶやく。
写真部に入部してきた小鳥遊に、それぞれが好意的に接している。
人間のあたたかさを感じる光景だ。
今日は元々、部活対抗リレーの練習をするつもりだったらしいが……
新入部員の登場に、すっかりそのことは頭から抜け落ちているようだ。
もっとも、そのことを指摘したらなぐも先輩は飛び上がって逃げていきそうだがな。走りたくないんだし。
「ほら、光矢クンもこっち来なよ!」
「ん、あぁ」
あいから呼ばれ、俺はみんなの輪に混ざる。
まだ考えることはあるが、ひとまず、小鳥遊が馴染むのを見守るとするか。
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