文学女子
鍵沼のことが気になっているという女の子。
物好きな人間がいたものだと思いつつ、俺は彼女らに協力することになった。
協力を申し込まれ……というか半ば強制的にさせられるわけだが、まあやるからには真剣に取り組もうと思う。
闇野の友達との顔合わせは、また時間を置いてとなった。
授業中にあまり別のことをしていてもなんだし、なによりその友達とやらの心の準備ができていないらしい。
奥手……と聞いたが。
俺に会うのにも、心の準備が必要なのか。
「よー真尾ー。またあの子と話してたじゃん、どうしたんだよー」
と、闇野と別れた俺に鍵沼が、うざったらしく肩に手を回してくる。
俺はそれを、すんまりと払いのける。
「なんでもない」
まさか、彼女の友達がお前のことを気になっているらしい……なんて言えるはずもなく。
なので俺は、適当にごまかすが……
「なんだよもー、また如月さんに疑われても知らねーぞ?」
……ますます、こいつのどこを好きになる要素が?
「その心配はないだろ。
そもそも俺は、闇野のことは女として見ていない」
「へー、闇野さんって言うのか。
……って、それさすがに失礼すぎだろう」
とは言われてもな……俺はあいつに殺されているんだ。どうやったら好きになれるのか。
過去の遺恨を持ち込むつもりはないので、嫌っているわけではないが……
好きでも、ない。
とはいえ、あまりあからさまでも、俺と闇野の間になにかあったのかと、勘ぐられる可能性はあるか。
「けど、彼女美人さんだしさー。真尾、今度紹介してよな」
「……そうだな」
闇野は確かに、容姿だけ見たらさなに勝るとも劣らない……
いや、やっぱりさなのほうが格段に上だわ。
そんな闇野を見て、鍵沼はデレデレとだらしなく表情を緩めている。
気持ち悪いな……
安心しろ鍵沼、近々あいつに、お前のことを紹介するつもりだから。
まあ正確には、あいつの友達……お前に気があるという、女の子にだがな。
「じゃ、俺はさなと二人三脚の練習をしてくるか」
「おー、行って来い」
さなが手持ち無沙汰になっているのを発見した俺は、さなのところへと向かう。
先ほどまでクラスメートと体をほぐしていたようだが、今は暇をしている。
「さな、二人三脚の練習、付き合ってくれないか」
「! あ、はい、もちろんです!」
そして、さなとの練習……だんだんとリズムが合ってきて、それがさらにこの時間を至福のひとときへと変えていく。
そんな、楽しみな時間ほどあっという間に過ぎてしまうわけで。
体育の授業が終わり、その後昼休みとなる。
俺は、事前に闇野と約束していた場所へと、赴く。
「屋上か……初めて来た」
いつもならばさなたちと弁当を囲うのだが、今日は用事があるかと断ってきた。
まったく、せっかくのさなとの食事の時間を潰されるとは……
屋上には、すでに俺を呼び出した闇野が……そして、もう一人の女子がいた。
「来たぞ」
「遅いわ」
「理不尽な」
ベンチに腰かけている二人は……正確には闇野だけだが、弁当箱を広げて昼食を開始していた。
「人を呼び出しておいて、先に食っているのか」
「あんたを待つために、どうして私が昼食を我慢しないといけないの」
「……」
この女……!
やっぱり帰ろうかな……そう思い始めた時。
「ゆ、遊子ちゃん、わざわざ来てもらったのに悪いよ!」
闇野の隣に腰掛けていた女子が、おずおずと口を開く。
この場に居るってことは、この女子が鍵沼のことを……
俺は、その女子を観察する。
黒髪をおさげにして、眼鏡をかけたおとなしそうな女子。
なんというか、本とか好きそう……文学女子ってやつかな。
「あ、こ、こんにちは。初めまして。
今日は、お呼びたてしてすみません」
「いや……」
礼儀正しく、おさげ女子は立ち上がり、頭を下げる。
闇野の友達とは思えないくらい、礼儀正しい子だ。
これで、闇野みたいな性格だったらどうしようかと思ったが……
とりあえず、話を聞くくらいは、いいだろう。
ここまで読んで下さり、ありがとうございます!
もし面白い、続きが見たいと感じてもらえたなら、下の評価やブックマークを貰えると嬉しいです!




