なんか、やだ
学校の授業では体育の時間が多くなり、部活では体力づくりの時間が多くなった。
相変わらず、なぐも先輩はいやだいやだと、駄々をこねていたが。
俺は、別に体を動かすのは嫌いではない。
だが、この体になってからこう、連日のように体を動かすのは初めてだ……体も、疲れが溜まっていた。
それは俺だけではない。
ということで、この日は走り込みをやめて、部室での活動となった。
「はぁあ……カメラちゃんたち、恋しかったよぉ」
「……あれは大丈夫なのか?」
「さあ」
なぐも先輩は、運動から解放されたのが嬉しいのか、いつも使っているカメラを抱きしめ、撫でまわしている。
およそ、人に見せてはいけない表情を、浮かべている。
今まで写真部本来の活動が出来なかったから、いろいろ溜まっていたんだろうか。
「はぁ、もうやんなっちゃうよ。
体育の授業では、体育祭の練習ばっかりだしさ。
そもそも体育自体好きじゃないのに」
「なぐも先輩が出るのは……あー、騎馬戦の騎手でしたっけ」
「そう。もう授業時間ずっと肩車されて、動き回っててさ。
おかげで股が痛くて」
「……」
俺は、今の発言をどう受け止めればいいんだ?
あいは、こほんと咳払いをする。
「先輩、あまり、男の子の居るところでそういうことは……」
「あはは……」
この先輩、奇人ではあるけど、初めて会った時はもう少し女性らしい面があった気がするんだけどな。
それとも、俺を男として見ていないだけか。
どっちでもいいが。
さて、本来ならば写真部の本来の活動として、写真を撮りに行きたいところだが……
なぐも先輩は、動く気配がない。
「あー、筋肉痛……
もう、カメラに囲まれてずっとここにいたい」
曰く、体の節々が痛いらしい。
現役の高校生とは思えない姿だ。
多分、人の目がなければこの場で手足を広げ、寝転がることだろう。
「ところで、助っ人は見つかったんですか?」
思い出したように、あいが問いかける。
写真部の人数は、相変わらず四人だけ。部活対抗リレーに出るために、あと一人メンバーが足りない。
部員が足りない場合は、よそから助っ人を連れてくることになっている。
助っ人の件は、各自あてを探しておくように話していたが……
一年生、それも入学一カ月の俺たちに、そんな伝手があるはずもなく。
先輩なら、そういう伝手もあるんじゃないかと思っていたが……
「私、友達少なくて……」
ただ悲しみの一言を、返されたわけだ。
あれから数日。現状の具合はというと……
「残念ながら、まだ見つかってないよ。
はー、見つからなかったら見つからなかったで、部活対抗リレー出なくていいってならないかな」
「その場合は、四人でも五人分の距離を走ってもらうみたいですよ」
「なにそれひどくない!?」
「そもそも、五人以下の部活は廃部になってますからねえ」
未だ残っているこの写真部が、特殊なのだ。
急になぐも先輩以外の部員がやめたから、学校側としても対処を迷ったんだろうな。
まあ、なぐも先輩が遅いかはこの際どうでもいいが……
写真部が廃部になって、困るのは俺たちだ。
なので、廃部を免れるためには今回の部活対抗リレーで、いい結果を残し、興味を抱かせたいところ。
「ふはぁ……」
……もしも、だ。俺の残量魔力を、なぐも先輩に使えば。
それによりなぐも先輩の身体能力を一時的に上昇させることは、可能だ。
もしものときは、魔力を使ってでも……
「でも先輩、頑張ってますし。きっと良い結果が出せますよ!」
「そうかなぁ」
「そうですよ!」
力強いさなの言葉に、俺は考えを改める。
そうだな、ズルしてここを凌いだところで……なんの意味も、ないよな。
それに……
「でも、どうにか楽して部員増やしたいー!
部員増やして、私のために走ってほしいー!」
「……」
この人のために、限られた魔力を使うのは……
なんか、やだ。
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