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転生魔族は恋をする 〜世界最強の魔王、勇者に殺され現代に転生。学校のマドンナに一目惚れし猛アタックする〜  作者: 白い彗星
転生魔王は青春を謳歌する

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想いを伝えて



「真尾様、いったいどこへ……」


「帰るんだ、当たり前だろ」


 空もすっかりオレンジ色から暗くなりかけていて、喫茶店を出た俺は、未だしがみついてくる新良をうっとうしく感じていた。

 本当なら、こんなやつに構うことなく、さなを追いかけたかったが……


 結果的に、こいつは俺と同じ世界の魔族で、部下だった女であったことが判明した。また、体育祭の際に感じた魔力の正体も、こいつだと。

 これを確認できただけでも、こいつと二人きりになったかいはあった、ということか。


 とはいえ、これ以上情報を引き出せそうもない。というか、有益な情報を持っていないようだ。

 中学生として過ごしているようだし、近いとはいえそうそう会うこともないだろう……


「あ、真尾様連絡先交換しましょうよぅ! 魔界では魔族同士ならテレパシーでお話しできましたけど、ここじゃそうもいきませんし。

 ホント人間の身体って不便ですよねー!」


「……あまり外でそういうことを言うな」


 この世界で過ごしてきて、魔界だの魔族だの勇者だのというものは、フィクションの世界でしかないことは理解してきた。

 現にこの世界では魔力もない。なので、魔法を使うには体にわずかに残った魔力を使うしかない。なのにこのバカは、俺に気付いてもらうためだけに魔力を使ったようだが。


 ちなみに、人間の身体であるこの肉体に、僅かながら魔力が残っている理由はわかっていない。

 まあ、人間の世界に転生などという理解不能な事態が起きている時点で、わからぬものは"そういうもの"だと思っておくしかないが。


「はーいっ」


 俺たちの世界での常識は、この世界での非常識だ。大っぴらに魔力がどうのなどと言えば、周囲から白い目で見られるだろう。

 まあ、こいつは中学生で、中学生には"そういう時期"があるらしいから、こいつがどれだけそう言ってもあまり重きには捉えられないだろうが。


 俺自身は、別に周りにどう思われようと構わない……と思っていた。以前までは。

 今は、さなに悪く思われてしまうのが、怖くて仕方がない。


「魔王に上り詰め、幾千幾万の魔族を従えた俺が、怖い、か……」


「? どうしました?」


「なんでもない」


 怖い、などと、いったいいつ以来の感情だろう。それも、人間の女一人相手にだ。

 さなに悪く思われたくない……嫌われたくない。そんな気持ちが、自分の中で渦巻いている。


 先ほどの、さなの……なんといえばいいのか。無ではあるが、無ではない表情。それが、頭から離れない。

 あいの話とも含めると、さなは俺と新良がなさ良さげにしているのを見て、嫉妬した……という結論に達した。


 新良と、前世ではともかくこの世界では仲が良いどころか会ったばかり。それも、絡んできたのは向こうからだ……

 そう言い返そうと思えば、できるだろう。だが、違う……それでは、なにも解決しないだろう。


 俺は、嫉妬というものをしたことがないし、そういう感情も知識としてでしか知らない。知らないが……

 さなのあのときの感情が嫉妬だというのなら……きっとさなは、あのとき傷ついて……


「ま、真尾、くん!」


「!」


 さっさと新良を追い払って、俺は……と考えていたところへ、今一番聞きたかった声が聞こえた。

 考えるよりも先に、体が反応していた。


「さな……」


「はぁ、はぁ……」


 そこには、会いたくて仕方がなく、でもどうやって会えばいいのかわからない……さなの姿があった。

 肩で息をしている。走ってきたのか……あんな、必死になって。


 今はちょうど、夕日が輝いている。さなの顔は、逆光でよく見えない。


「さな、あの……」


「ごめんなさい!」


 俺が、なにか言わなければと口を開くと同時……いや、それよりも先に、さなが口を開く。

 そして、予想もしていなかった……さなは腰を折り、俺に頭を下げたのだ。


 突然の行動に、俺も少し焦ってしまう。


「な、なんなんですか、あの女、いきなり……」


「お前は黙ってろ」


 後ろでうるさい新良を放置し、俺はさなの下へと足を進める。

 さなの後ろからあいが走ってきているのが見えたが、今はさなにしか集中できない。


「私、勝手にいらいらして……なにも悪くないのに、真尾くんに当たって……最低です……」


 頭を下げたまま、さなは話す。その声は、震えている……泣いているのか、あるいは泣きそうになっているのか?

 俺は、さなの前に立つ。その顔は見えない……だが、俺は手を伸ばして、さなの頬に手を当てる。


 やわらかで、あたたかい肌だ。触れた瞬間、さなの肩が揺れたのがわかった。


「頭を上げてくれ。俺の方こそ、不安にさせた……」


 もしも、逆の立場で考えたら。さなが、俺のまったく知らない男と、仲良さげにしている。本人にそのつもりはなくても、目撃した瞬間は動揺で、それどころではないだろう。

 そんな現場を目撃したら……面白くは、ない。


 俺がそうなのだ。さなは、もっと傷ついてしまっても、おかしくはない。


「あいつは、その……昔の、知り合いだ。会ったのが久しぶりだったから、すぐにはわからなくてな」


「……知ってる子、だったんですか」


「あぁ。だが、身内に近いような奴だ。それ以外の感情はない。もちろん恋愛感情も」


「がーん!」


 さなを安心させるように、なるべく優しい声で語りかける。

 本当のことを話すわけにはいかない……いや、話しても混乱させるだけだ。本当のことは話さないか、それともいつか話すか……

 いずれにしろ、嘘ではない言葉を、伝える。


 それを受け、さなはゆっくりと顔を上げる。

 その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいて。しかし、それを流さないように必死に、耐えているようだった。


「私、変なんです……真尾くんが、他の女の子と仲良くしてるって……そう、思っただけで……胸の奥が、きゅってするんです」


「……」


「真尾くんが悪いんじゃないのに、私が勝手にそう感じただけなのに……真尾くんに、当たってしまって……そんな自分が、嫌になる……!」


「さな……」


 さなは、自分の感じたことを吐露する……抑えていた感情を、ぶつけるように。

 これまで、さなは一歩引いた様子で、自分を前に出すことはしなかった。だから、気づかなかった……いや、それはただの言い訳か。


 さなの不安な気持ちに、俺は気づけなかった。さなを、不安にさせてしまった。それが、俺の反省点。


「さな、不安にさせてすまない」


「ぁ……」


 気づけば俺は、さなの身体を抱きしめていた。

 これまで、俺なりにストレートな気持ちをさなに伝えてきたつもりだ。だが、こうした行為はしていない。手すら、まだまともに繋ぐことはないというのに。


 だが、今はこうしなければならないと……そんな、気がした。


「さなが謝ることはない。俺の配慮が足りなかった」


「でもっ……」


「それだけ、さなも俺を想ってくれているということだろう? むしろ、俺は嬉しい。

 俺はさなが好きだ……さなも同じ気持ちだと、わかったのが嬉しい」


 これは、本音だ。確かに、さなの言う通りさなの勝手な思い込みで、俺に当たった部分はあるのかもしれない。

 だが、それはそれだけ、俺のことを想ってくれているということ。どうでもいい相手に、嫉妬などしない。


 思えば、不安に思うことはあった。俺と付き合うと返事をくれたとき……



『でも、驚いたけど……嫌では、なかった、です。

 それに、真尾くんと過ごしてきて……楽しいなって、思えたんです。だから……』



 ああは言ってくれたが、本当はどうなのか。やはり、俺がしつこかったから、付き合う選択肢を強制したのではないか、と。

 それが杞憂だったと、思い知らされた。それが、俺にとっては嬉しかったのだ。


 俺の胸元に押し付けられた、さなの頭が動く。そのまま、顔を出して俺を見上げるようにして……


「真尾くんはいつも、直球で伝えてくれますね。

 でも、そういうところが……好き、です」


 恥ずかしがるようではあるが、笑顔を浮かべていた。

 顔が真っ赤だったのは、夕日のせいだろうか。それとも……

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!

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