07 オベロンへ
オベロンに向かうには森の中の一本道を進む必要がある。
この森には魔物が生息しており危険ではあるが、今現在は唯一ローゼンハルド王国と他の国を繋ぐ道である。
海は海で魔物がいるので、まだ安全な航路が確立していないので海からローゼンハルド王国に渡るのは無謀であるので、この道がやはり唯一の道である。
それにバナタージュ公国はその立地から魔物の生息領域とは直接は接しておらず、国内に現れるのは殆どがはぐれと呼ばれる群れからなんらかの理由によってはぐれた個体でありそこまで強くはない。
中にはゴブリンなどの繁殖力の高い魔物が流れて来て、気付かない間に森に勢力を築く事はあるが大抵は軍を派遣すれば済む話であり、どこかバナタージュ公国では魔物をただの獣と侮っている節がある。
しかし実際に魔物の領域と接している国では、魔物は決して油断して良い相手ではなく、毎日死力を尽くして国土を守っているのである。
なのでこの道を進むと必然的に、魔物の相手もしなければならないのである。
閑話休題。
途中護衛を引き連れた商人の一行と出会ったぐらいで、他は特に問題なくオベロンに到着した。
噂では聞いていたが、三重の城壁の圧迫感は凄まじく、まさに難攻不落の城塞都市と言った感じである。
「凄いわね。ニア」
「はい。このオベロンを突破してローゼンハルド王国本土に向かうのは厳しいと言えますね」
「そうね。バナタージュ公国全軍で挑んでも、陥落させるのは難しいと思うわ。本土からの援軍もあるでしょうし、実質バナタージュ公国はこのオベロンより先には行けないわね」
軍事の知識が多少しかないパトリシアでさえ、此処を落とすのは不可能とわかってしまう威容を誇っていた。
オベロンに配置されている兵士達は、歴戦の古兵と言う雰囲気を持っており、一人一人の動きが機敏でありローゼンハルド王国に誇りを持っている事が伺える。
それに比べてバナタージュの兵は、仕事だからやっている感が否めない。
現在は後継者争いの影響で、国内に乱れが生じておりそのせいで割りを食った者達で護衛の兵士が構成されているので仕方ないだろう。
しかしその様な事情はローゼンハルド王国には関係ないので、バナタージュ公国が侮られる原因の一つになるだろう。
まだパトリシアは国内の平民からの支持が厚い為に、兵士達は頑張ってくれているがこれが他の貴族ならもっと兵士達の士気は低かったであろう。
パトリシアは母親の身分がそこまで高くない事から、兄二人の母親からは嫌われており、肩身の狭い思いをして来た。
その影響もあり下の者達には優しくする事を自然と心掛けており、平民にも優しい事で平民からの支持は高かった。
そうこう考えているとオベロンに入る。
外からでも凄い事がわかったが、中に入るとより一層凄さが伝わる。
三重の城壁を抜けてオベロンの中心に入る。
オベロンは全て地面は石畳で出来ており、建物も2階建て以上である。
バナタージュ公国でこの様な都市を建設するには、十数年の時間と莫大な費用が掛かるだろう。
建設をしたとしても財政状況は悪化する可能性が高く、とても建設する事は現状では難しいと言わざるを得ない。
オベロンにはローゼンハルド王国軍の第五軍団が駐屯しているらしく、この後その第五軍の軍団長マキシマスとの面談予定が入っている。
軍団長とは我が国で言うところの大将軍と同等の地位にあると聞いた。
パトリシアは戦場に行く気持ちで彼女にとっての鎧であり武器であるドレスなどに身を包む。
全ての準備が整い次第、馬車に乗りマキシマスの所へと向かう。