05 南方防衛戦
アスクこと来栖侑は領土が広がりレベルアップした事で、新たな施設を建設したりと内政に取り組んでいた。
「ふぅ、肉体的には疲れないが精神的には流石に疲れるな」
身体はキャラクターになったので、丈夫で多少の事では疲労は全く感じないが精神は侑のままである。
多少補正は加わっているが、そこまで変化はしていないと思う。
その後一通り確認作業が終わると気分転換に外に出る事にした。
「エネラ。少し視察をして来る」
「わかりました。護衛を手配しておきます」
護衛隊と共に都市を回る。
NPCだと思っていたが、すっかり生活感のある街へと変わり侑は誇らしい気持ちになる。
城へと戻り執務の続きをしていると、緊急報告がもたらされる。
それは南方よりゴブリンの大群が現れる。との事であった。
現時点で判明しているだけでもその数は万を超える数であり最終的には数万以上にも上ると予想される規模である。
「流石は魔物の世界と言ったところか。しかし何の備えもしていない訳ではない」
南方には防衛線を準備している。
今現在の兵力だけでも数日は持ち堪えられるだろう。
「第三軍団を動かせ」
「承知致しました」
第三軍団は機動力を重視した軍団である。
南方の対応に追われていると、新しく知らせが来る。
それはバナタージュ公国よりの使者であった。
「如何致しますか?お引き取り願いますか?」
「いや、会おう」
使者の要件は、これから第一公女一行の使節団をこちらに送ってもいいかと言う確認であった。
現在南方より迫るゴブリン軍に対応するべく、動き出している所にやって来るのは正直なところ邪魔でもあるが、ゴブリン軍を圧倒する所を見せて優位に立つ事も可能であるので許可をした。
その間に第三軍団5万は南方防衛線に到着した。
最終的にゴブリン軍は8万の規模であり、それもちゃんとした武装が整えられている事から、野良や凶暴化したゴブリンの集まりではなく、ちゃんとした軍として機能しているのであろう。
多分この規模のゴブリン軍にはゴブリンキングやゴブリンカイザーがいる事だろう。
第三軍団は野戦がメインの高機動力部隊である。
ゴブリン軍の歩兵部隊に対して突撃して行く。
南方防衛線に配置されていた5千の守備兵は弓で援護を開始する。
あと数日もすれば他の軍団も到着し、数は逆転するだろう。
ローゼンハルド王国の南方でその様な10万規模の戦争が起こっているが、南方地域以外では平穏そのものであった。
南方地域に来ていた他国の商人はゴブリン軍の襲来を知らせる為に自国に早馬などを出していたが、ローゼンハルド王国はその事を知っているたが干渉しなかった。
仮にこの情報をもとに八つの都市国家が連合を組んで攻めて来たとしても、迎撃は十分に可能である。
それに決戦戦力である竜騎士などは、あれから数も増やしており未だに南方戦線に投入はされていないので、すぐにオベロンなどの西方地域に投入出来る。
やる事を済ませて大浴場で疲れを癒していると報告が来る。
「お寛ぎのところ失礼致します。ただいま第三軍団長フィリアよりメッセージが届きました。どうやら此度のゴブリン軍は先遣隊である可能性大との事です。
どうやら後方には連合を組んだオーク軍とオーガ軍の2軍がおり、合わせて7万が現在こちらに向けて進軍中との事です」
「わかった。念の為に第二軍団を向かわせろ」
「はっ!仰せのままに」
ゴブリン単独での行動では無いと言うことか。
近年力を増すローゼンハルド王国を脅威に感じ、早めに潰そうと考えたのだろうがそれには少し遅過ぎたな。
こちらの世界に召喚されて間もない頃なら兎も角、今はその頃よりもローゼンハルド王国は強大化しており連合を組んだとしても、長年争って来た三種族がそう簡単に連携出来るはずも無い。
現に足の速いゴブリン軍が先に到着して、他の二種族を待つ事もなく先端を開いている。
もしかしたら、オーク軍とオーガ軍は犠牲を減らすためにわざとゴブリン軍に先に行かせた可能性もあるかもしれないが、報告ではどちらも本能に忠実な種族である。
それに人類が好物の奴らがそれを譲るはずもないか。
大浴場から出た後は、執務に戻りよく遅くまで執務室の灯が消える事はなかった。