04 諸外国の動き
アバリシア帝国
都市国家群より西方に位置する中堅国家二つを超えた先にある大国。
アルベリア大陸の制覇を悲願にしており、いずれは人類国家を統一し、魔物の領域を解放すべきだと信じている。
強大化する為に手段は選ばず、有用なスキルを持つ者がいれば、家族を脅してでも攫いアバリシア帝国の礎に使う。
そしてそんなアバリシア帝国の主人である皇帝の元にもローゼンハルド王国の知らせが届く。
=帝都アヴィールの皇帝執務事務=
「ほう、外にも人の国があったか」
皇帝ルドワルド1世は面白そうに笑った。
「はい。その様です」
「もっと情報を探れ、諜報員の数も倍にしろ」
都市国家群はいつでも潰せると思い、あまり多数の諜報員を入れて来なかった。
アバリシア帝国の最大の敵は東ではなく南も北であった。
南には獣人と呼ばれる半人半獣の種族が暮らしており、アバリシア帝国とは敵対している。
幸いと言って良いのか、獣人は国単位ではなく氏族単位で成り立っている為に現在も渡り敢えているが纏まれば厄介である。
そして何よりも厄介なのは獣人は結束力が高く、調略が通じないばかりか諜報員も匂いなどで看破されてしまうのである。
一応結束したりするので、その土地を纏めて獣王国と呼ばれている。
一方の北にはエルフと呼ばれる魔法に長けた種族がおり、他にも森に暮らす種族と手を結び森林同盟と呼ばれる同盟を築きアバリシア帝国に対抗している。
彼らは人類の導き手と自認しており、他の種族を下に見る傾向にある。
エルフは数は少ないが一人一人が卓越した戦士でありエルフ一人を相手に騎士10人は必要と言わしめる程である。
北と南の脅威を取り除かない限り、東には進出出来ない状況である。
東にある国とは現在は不可侵条約を交わしており、必要最低限の兵力を駐屯させている。
ローゼンハルド王国に向かった使節団は帰って来ると、早速王と謁見しローゼンハルド王国の強大さを説き敵対しない様にと話す。
こうして幾つかの都市国家とローゼンハルド王国は交易を結ぶ事に成功する。
因みにローゼンハルド王国に侵入しようとした者達は悉く見つかり姿を消した。
ローゼンハルド王国の次の狙いは、残った都市国家である。
何度か使者を送るが返事は来ず、しまいには使者に危害を加えようとしたのである。
これに対してローゼンハルド王国は宣戦布告し、僅か3日後には8万の大軍が森を超えて都市国家群に雪崩れ混んで来た。
事前に敵対関係にない都市国家には伝えており、そこまで混乱は大きくはなかった。
攻められた都市国家は慌てて動員を開始したが、間に合わず僅か半日で陥落する。
こうして九つあった都市国家の数は八つに減り、ローゼンハルド王国は西方への足掛かりを手に入れた事になる。
最初の方は反応的な者が多かったが、ローゼンハルド王国の治世は豊かであり前よりも豊かな生活を送れる事になり、すっかりローゼンハルド王国に親近感を持ち問題は無くなった。
ローゼンハルド王国に使節団を送らなかった国は慌てて送り、使節団を送った国は更なる友好を深めようと動き出した。
都市国家群の横に接する中堅国家バナタージュ公国は突然現れたローゼンハルド王国にどう対応するかで意見が割れていた。
「ここはやはり使者を送るべきでは?」
「うむ、先ずは話し合いを」
「それよりも他国と連携しこれ以上の拡大を抑えるべきでは?」
現在バナタージュ公国では第一公子と第二公子の間で、後継者争いが起きておりこれ以上問題を抱え込みたくないのが現状である。
第一公子と第二公子の母親は別であり、第一公子の方は北の侯爵家であり、穀倉地帯でありバナタージュ公国の食糧庫と言われている。
第二公子の方は南の侯爵家を母に持ち、公路であり他国からの交易品などで潤う交易都市を所有している。
その為にどちらも公国に取っては重要な地であり、勢力は拮抗している。
ローゼンハルド王国への使者に対しても、第一公子が行くか第二公子が行くかで揉めた。
現在バナタージュ公国の問題は後継者争いだけではなく、西南にもある。
西南には魔物の領域があり、その場所は昔は鉱山があり現在でも鉱脈は太く多くの鉄が産出可能ではあるが、その地を西方の国家リンギール人民連邦が狙っているのである。
表向きリンギール人民連邦は人々の自由と平和を詠っているが、実際は世襲制度ではないが一定数の者が権力を握っている。
閉鎖的な国家であり、独特の価値観を持っている野心的な国家である。
閑話休題。
最終的にはどちらにも属さない中立派である第一公女が使節団の代表としてローゼンハルド王国に向かう事が決定した。