03 進出
新月の夜から三ヶ月が経過した。
森の開拓は順調に進み、アスクの居るローゼンハルド王国と諸外国を遮る森の中間地点に三重の城壁で守られた城塞都市オベロンを建設した。
オベロンには常備軍3万が、魔物の襲撃からオベロンを守る為に常駐している。
そして本日、漸く森を抜けて諸外国との道が完成した。
森の先にある国は都市国家であり、一つの都市で国を形成している。
それが全部で九つあり、普段は争っているが都市国家以外の国が侵攻して来ると、九つの都市は連携して撃退する。と言ったサイクルが続いている。
取り敢えず友好的に接する為に使節団を派遣する事にした。
加えて争うことも視野に入れて、森の抜けてすぐに砦を建設し兵を入れておく。
この日都市国家群には激震が走った。
森の先には人類の国家は存在せず、魔物の領域が広がる魔境だと古くから思われており、森に調査に入った者達で生きて戻った者はごく僅かであり、それでも森の半ばまで行けた者達は居ない。
その為森は禁制の地として出て来る魔物を倒すだけの日々であった。
それがこの日破られた。
森を抜ける程の武力を持つ国が現れたのである。
森を抜けた先にある国から来た使節団は自らをローゼンハルド王国の者と言う。
古い文献などを漁ってもローゼンハルド王国の名前は聞いたことがない。
しかし森で隔絶されていたのだとしたら、仕方がないことだと思う。
未知の国家の出現にどう接すれば良いか都市国家の首脳陣は悩む。
そして都市国家には他国の間者も紛れており直ぐに自国に新たな国の情報を伝える為に動き出す。
ローゼンハルド王国側はその動きに気付いていたが、敢えて見逃していた。
広く知らしめる為である。
都市国家の反応は三つに分かれた。
一つは友好的に、一つは無難に、一つは完全拒否である。
完全拒否をした都市国家は、元々鎖国的であり都市国家群の中でも浮いた存在であった。
友好的に接する事が出来た都市国家とは交易の話を進める。
先ずは都市国家の使節団がローゼンハルド王国に一度来る事で話がついた。
そして十日後、ローゼンハルド王国へ向けて三つの都市国家の使節団が禁制の森の手前にやって来た。
そこでローゼンハルド王国の案内役兼護衛部隊と合流する。
先ず目指すのは城塞都市オベロンである。
オベロンまでは途中で町や村はなく野営する必要があるが、魔物の居る森なので慎重に進む必要がある。
そして三日後に城塞都市オベロンに到着した。
使節団は巨大な三重の城壁に唖然とする。
彼らの国力を考えれば、この巨大な三重の城壁を作る場合は国家の全ての資金や資材を20年費やして漸く完成する事が可能である。
つまり現実的ではないのである。
中に通され彼らは更に驚く。外から見ても巨大な城塞都市は、中を見て更にその凄さに気がつく。
道は全て石畳で出来ており建物も全てが2階建て以上である。
オベロンで一泊したあと、ローゼンハルド王国の本土に向かって進む。
途中に町が二つあるので、そこで一泊ずつして森を抜ける。
そして使節団は森を抜けローゼンハルド王国本土に到着し更に驚く。
森を取り囲むように長い防壁が築かれていたのである。
この防壁を作るのに九つの都市国家が力を合わせても最短でも30年以上は掛かるだろう。
そして使節団一行は終始圧倒されながらローゼンハルド王国の首都であるイニティウムに到着する。
イニティウムは召喚された当初よりも巨大になり、城も立派な物が建設されていた。
人口も増えこの都市だけで10万の常備軍が居る。
都市国家は平均して1万5千〜2万程に対してローゼンハルド王国はその数十倍の国力と軍事力を持っている。
使節団は敵対しては行けない国としてローゼンハルド王国を認識する。
都市国家群の西側にも国はあるが、中々ローゼンハルド王国ほどの国は存在しない。
勿論ローゼンハルド王国は全てを見せた訳ではないが、それでも圧倒的な国力差に都市国家の使節団は既に心が折れており、本国に帰れば何としても王を説得して友好条約を結ぶ必要がある。と確信した。
彼らはアスクに謁見しその覇気に気圧される。
謁見後は使節団を歓迎する宴が開かれた。
使節団は初めて目にする食べ物に戸惑いながらも口にし、そのあまりの美味さに感涙する者まで出るほどであった。
そして二日ほど滞在した後、使節団は礼を述べて自国に帰って行った。
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