11 内乱の始まり
投稿ペースが落ちてしまい申し訳ありません。
最近は私事で申し訳ないですが、忙しく落ち着きましたら投稿ペースを上げたいと思います。
ローゼンハルド王国が動こうとしている時、バナタージュ公国内で動きがあった。
漸く傭兵団と合流した第一公子フランシスの軍勢2万3千が南下を開始したのである。
それに呼応する様に、第二公子ニコライの軍勢3万も北上を開始した。
これに対して公王の軍勢1万は首都で籠城しており、各地の諸侯に向けて手紙が送られている。
数名の貴族が挙兵し、首都に向けて進んでいるが間に合うかは微妙な所である。
その報告を聞き、アスクは西部方面軍5万を率いてオベロンに向かう。
その中にパトリシア一行の姿もある。
オベロンには準備万端の第六軍と第七軍の2個軍団がいる。
その軍団と合流し合計11万の大軍でバナタージュ公国に向かう予定である。
ローゼンハルド王国軍のこの動きは、すぐにバナタージュ公国にも伝わる。
「フランシス殿下。どうやらパトリシア殿下がローゼンハルド王国に力を借りている様です」
「何!?今まで王位には興味のない振りをしていたと言うことか!ジョサイア王国の援軍はどうなっている?」
「はっ!ジョサイア王国軍2万が国境地帯にまで来ましたが、そこから動いた様子が見られません」
「様子見をしているのでしょう。それにリンギール人民連邦の動きも怪しいと聞きます。間にシャフラン共和国がありますが、シャフラン共和国はリンギール人民連邦と同じ東方聖教を信仰しております。領内の通過を認める可能性は高いでしょうな」
仮にリンギール人民連邦がその地を占領したとしても、飛び地で管理が難しいがそれほどまでにリンギール人民連邦は鉄が欲しいのである。
ノーザンポーク連合王国との戦争に使う、鉄が不足気味であるからである。
シャフラン共和国は領内通過時の税により潤う為に、黙認するだろう。
閑話休題。
「どうすべきか?」
「そうですな。幾つかの都市国家に文は出しましたが、どの都市国家からも色良い返事は貰えませんでしたな。此処は当初の予定通りに南下を開始しまして首都を目指しましょう。
ジョサイア王国軍も我々の快進撃が伝わればやって来るでしょう。既に王位を取った暁には食料の輸出の量を増やすのと、関税を減らす事のを条件に密約を結んでおりますので」
安心させようと母親の父親であるヨクバー侯爵つまりフランシスの祖父がそう言うが、フランシスは言葉では「わかっている」と言うが、実際にフランシスは落ち着きなく部屋をウロウロしていた。
それを見てヨクバー侯爵は頼りなし。と思うが決して顔や口に出す事はせず、優しい祖父を演じていた。
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一方のニコライの方はと言うと、こちらは比較的落ち着いていた。
「お祖父様。ノーザンポーク連合王国の方はどうですか?」
「そうですな。それがリンギール人民連邦の動きが活発化しており此方への援軍は当初よりも少なくなる可能性が高いと使者は仰っていましたな」
ニコライの後見人でもある南の侯爵であるダロール侯爵
「なるほど。確かにリンギール人民連邦はノーザンポーク連合王国にとっては不倶戴天の敵ですからね。こちらよりも注意が行くのは分かります。シャフラン共和国はどうですか?あちらはリンギール人民連邦と同じ東方聖教の国ですが、まだ話が通じるでしょう?」
「そうですな。あの国はいつもと同じです。国としては動けないが好きに傭兵を雇ってくれて構わないと」
「やはり欲張りな連中ですね。まあ、傭兵と言いつつその実態は訓練された兵士ですので助かりますが、少しだけ割高なのは必要経費と割り切りましょう」
「ええ、負ければ意味がありませんからな。下手にケチって負けたとあれば笑い種です。やはりニコライ殿下には王の素質がおありになられる」
「ふふ、いえ偉大な祖父を見てきたのです。この程度当然ですよ」
楽しそうに二人は笑う。
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公王であるダリクは悩んでいた。
それはフランシスとニコライの対立についてである。
生来気が弱く、いつの間にか北の侯爵と南の侯爵の娘を嫁にもらう事になった。
政略結婚とはわかっていたが、それでもダリクは二人の嫁を愛そうとしたが、二人は互いに歪み合うばかりでダリクではなくその地位にしか興味が無いと確信した。
その後二人は身籠り息子を産んだが、先に生まれた北の侯爵の息子であるフランシスが第一公子に後に生まれたニコライが第二公子となった。
その時も揉めに揉めたのである。
そんな時、ふらっと王宮から出て街に繰り出したときに、パトリシアの母親アルーシャと出会った。
アルーシャも貴族ではあったが、子爵家の出身であり長女でも無かった為に比較的自由に育っていた。
普通に平民と遊んでおり、最初は街娘だとダリクは思っていた。
その明るくて元気な笑顔にダリクは惹かれていった。
一方のアルーシャも、見た目は高位貴族の子息ではあるが威張り散らした様子もなく、心根の優しさに次第に惹かれて行き二人はやがて恋人同士になる。
そして正体を打ち明けたダリクをアルーシャは受け入れてくれて、二人は晴れて夫婦となった。
その事を面白く思わないのは侯爵の娘の二人である。
しかしアルーシャの身分は低く、生まれた子供も娘であったので次第に脅威ではないと判断され、最大の敵であるお互いを敵視し合い、アルーシャと娘のパトリシアは放置された。
アルーシャ自身も後継者争いに関わらない様にひっそりと暮らす様になったのである。
心根の優しいダリクは愛のない結婚ではあったが、息子のフランシスとニコライの二人を愛していた。
なので兄弟同士で争う事に悲しんでいたが、二人の侯爵は国の重鎮であり中々上手く行かなかった。
そうして時は流れ、表面上は平穏を保ってはいたが遂にそれが決壊し現在に至る。
明確に反旗を翻した二人の息子だが、それでも未だにダリクは二人を愛しており、反逆者として討伐令を出す事に戸惑いを覚えていた。
そんなダリクを見て、頼りなしとして離れる者も中にはいた。
そんな時に、ダリクの元にパトリシアの宣言が届いた。
あの大人しく人前に出るのが苦手で、いつも人の後ろに隠れていた娘が兄二人を討伐する事を掲げた事に驚きを隠せずにいた。
だが、同時に申し訳なさがやって来る。
自分が決断しなかったばかりに娘に辛い決断を強いてしまった事をである。
その後ダリクは正式に二人の息子を国家反逆罪の国賊とし、それを支援する北と南の二つの侯爵家も同様に国賊とする事を布告した。
これにより少なくない貴族達が、二つの陣営から離れていった。
それに対して、公王の陣営に日和見していた複数の貴族が私兵を率いて合流した。
これにより三つの陣営の兵力は以下の通りに変化した。
フランシス軍:2万
ニコライ軍:2万6千
ダリク軍:1万4千
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