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悪役令嬢はお姉様と呼ばれたい!  作者: 春乃春海
第三章 悪役令嬢の婚約者
54/70

53. アルフレッド殿下②

 乙女ゲームにおけるアルフレッドルートの話はわかりやすい。


 グレースと婚約をしているアルフレッド殿下は、王族として地位の低い自分の立場に苦しむ少年で、学園卒業後の身の置き方について悩んでいた。

 そこに偶々ヒロインである婚約者の妹――ミラと出くわし、成り行きから進路の相談をし、ヒロインの前向きで優しい言葉に感化されたアルフレッドはミラを好意的に見るようになる。


 しかし、そこで登場するのが悪役であるグレースだった。


 婚約者と良い雰囲気になっている妹に気づき、彼女は激怒する。

 妹に怒りをぶつけるグレースと、その妹を庇う婚約者。

 二人の仲を引き裂こうとするグレースの画策とは裏腹に、惹かれあっていく二人。


 結果は想像がつくだろう。


 嫉妬は殺意へと変貌し、グレースは実の妹であるミラを自らの手で殺めようとする。

 しかし、よくある恋愛小説のように、間一髪のところでアルフレッドが助け、ミラは窮地に一生を得るのだ。


 妹を殺害しようとした罪でグレースは処刑されることとなるが、ミラの温情で僻地の修道院へと送られることになる。

 勿論、この時点でアルフレッドとの婚約は破談。

 こうして邪魔者のいなくなったミラとアルフレッドは結ばれてハッピーエンドというシナリオだった。

 

 


 ――本当、グレースにとっては碌でもない結末だわ。

 まさに俗に言われる破滅ルートである。


 これだからアルフレッド殿下との婚約は避けたかったのだ。


 今は改心してミラを溺愛している私だけど、今のところゲームのシナリオ通りに物語が進んでいることから、いつ何が起こるなんてわからない。

 アルフレッドとの関係には最善の注意を払わなくてはいけないのだ。

 

 別に仲良くなる気もさらさらないが、せめて協力関係には持ち込みたいのよね。


 そう思って、このお城までやってきたんだけど……。


 私はちらりと隣で憮然とした顔で歩くアルフレッド殿下に目をやった。

 当のアルフレッド王子は会話をするどころか、さっきから一度もこちらを見ようともしなかった。


「…………」

「…………」

「………………」

「………………」

「…………………………」

「…………………………」


 しばらく庭園を黙々と歩いているが、一向に会話もなく、私達の後ろをついて歩くマリアとアルフレッドの従者も困った顔を浮かべていた。


 折角綺麗な景色なのに、これでは気分も台無しだ。


 王宮の庭園というだけあって、その規模は小さい植物園くらいに広い。

 見たことのない花や木々が芸術作品のように植えられており、庭師の仕事ぶりが細かい所まで発揮されていた。

 芳しい花々の香りと小鳥たちの囀りが心躍るエッセンスとして庭園を楽しませてくれる。

 しかし、明るい陽射しが差し込んだ庭園とは対照的に、私達の周りだけ異様に空気が重い。


 アルフレッド王子は眉間に皺を寄せ、つまらなそうに歩いているし、話しかけるのも憚れるオーラを放っていた。

 これでは親睦を深めるもあったものではない。


 自分の不機嫌さを露わにする困った婚約者に私は内心ため息をつく。

 こうしていても埒が明かない。


「……あの、アルフレッド様」


 私が思い切って話しかけると、アルフレッドは足を止め、まるでまだついてきていたのかと言うように私に目を向けた。


「――なんだ?」

「どこまで行かれるのですか?」


 まさかこの広い庭園をまるっと一周するつもりなのだろうか?

 そう思って訊ねたのだが、どうやらアルフレッド殿下は何も考えていなかったらしく、無表情にその場に立ち尽くす。


「……」


 困った私はアルフレッドではなく、彼の従者へと顔を向ける。


「どこかに休めるような処はありますか?」

「ええと、こ、こちらです」


 突然、話しかけられた従者の少年は戸惑ったように眉を下げながらも、私達を近くの東屋まで案内してくれた。


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