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悪役令嬢はお姉様と呼ばれたい!  作者: 春乃春海
第二章 悪役令嬢は次期当主を目指す
45/70

44. お父様爆弾発言 again

 

 少しずつ気温が上がり始め、季節は春から夏へ移り変わろうとしていた。

 それでもこの国はジメジメとした梅雨というものはなく、空気も乾燥していることから割と過ごしやすい。

 

 

 もうすぐミラの母であるリリーが亡くなって一年となる。


 喪が明ければ、伯爵家の令嬢として、今まで控えていた社交界に顔を出す必要があった。

 パトリシアとルイが伯爵家に来たことによる挨拶周りもしなくてはいけない。

 もっともパトリシアに関しては、お父様と一緒に散々社交場に出回っており、今更という感じはあるが……。


 しかし、ルイに関しては初めてのお披露目となる。

 従僕のローリーの話では今はそれに向けて一層行儀見習いやダンスの練習に力を入れているらしかった。


 それはミラも同じで、幼少の頃から多少なりにパーティやお茶会などに参加している私とは違い、彼女は伯爵家に来てから数回程度しかそういった場に出席していないので、真剣な面持ちでレッスンに取り組んでいる。


 その数回は私が意地悪をして、嫌な思い出として潰しているのだからミラに対しては本当に申しわけなく思っている。

 そういった意味でも、次の集まりではミラに華を持たせ、他の貴族令嬢達に打ち解けるように、お姉様として頑張る所存である。

 

 それに、それとは別に社交界でやりたいこともあった。


 貴族にとって、社交場は大切な情報交換の場。

 将来の伴侶を見定める場でもあり、お家にとって有益となる交友を得るために奮闘したり、はたまたライバルを蹴落としたり、流行を取り入れたり、逆に発信したりと、ありとあらゆる情報収集と交渉の場でもある。

 私も次期当主を目指す者として、これを機にレトナーク産商品をガンガン宣伝するつもりだ。


 そのことをイルダやセドリックに相談したら、自らお茶会を企画してみては、と提案された。

 大人の社交場にいきなり参加するより、近隣の子息令嬢に絞った小さなお茶会の方が、ミラやルイも緊張しないだろうという計らいだった。

 

 良いアイディアだが、問題が一つ。

 今までのグレースは性格もキツく、我儘放題だったので、そんなに親しい友人がいないということだ。

 招待状を出したところで何人来てくれるか、正直不安でしかない。

 



 そんな招待客や日取りに難航している私の元へ、更に頭を悩ませる出来事がやってきた。



ーーーーー



 最近またパトリシアの様子がおかしいのである。


 春先の不正事件から暫くの間、大人しくしていたと思ったら、ここに来てどうもパトリシアの機嫌が良いのだ。


 今朝なども、屋敷の中ですれ違った際に妙に上機嫌で、「あら、今日はこれからダンスのレッスン? 頑張ってね」などと向こうから声をかけてきた。


 普段は廊下ですれ違っても顔を合わせることなく通り過ぎるのに、一体どういう風の吹き回しだろうか。

 

 鼻歌混じりに去って行くパトリシアに、マリアと顔を見合わせて唖然とした私は、嫌な予感がして、すぐさま調査を入れた。

 

 すると、前回の騒動時同様、またも頻繁に街へ出かけては買い物に明け暮れているらしいという情報が入った。


 ――もしや、また何か不正行為を?


 焦った私は、セドリックやハインツに指示して工房や商工会を回ってもらったが、今のところ、うちの商品に手を出している様子はなかった。


「――セドリック。不用意にお継母様にお金渡してないわよね」

「グレースお嬢様の提言された額しか支給しておりません」

「……そう。じゃああのお金はどこから?」


 謎に包まれたパトリシアの行動。


 何だろう。

 とてつもなく嫌な予感がする。



――――――――



 そんな、あくる日。


「あら? 今日の献立はやけに豪華ね」


 テーブルに敷き詰められた豪華な料理に私は目を見張った。


「――今日は何か特別な日なのでしょうか?」


 向かいに座るルイが首を傾げ、隣に座る母親を見つめた。

 すると、パトリシアが待ってましたと言わんばかりに、ニッコリと微笑んだ。


「とっても喜ばしいニュースがあるのよ」


 そう言って、何故か私に向かってニンマリと目を細める。


 ――うわ、何? 機嫌が良すぎて気持ち悪いんだけど?


 パトリシアはお父様に目配せすると、お父様が頷いた。

 そして、お父様は私達を見渡すと「大事な話がある」切り出した。


 お父様がこんな風にわざわざ話を仕切り出すなんて、何かのデジャブかしら?


 ーーああ、これは、嫌な予感がする。

 それも、とびっきり嫌な予感がするわ!


「お話とは何でしょうか?」


 まるでいつの日かを再現するように、ルイがプレゼントを貰う子供のように目を輝かせて、お父様に訊ねた。

 普段、積極的に話をすることがない義父から話を振られて喜ぶルイが不憫だ。


 ミラはと言うと、前回のことを思い出してか警戒した顔を見せている。


 可哀想に。

 あの純心の塊のミラが人を疑うことを覚えてしまったなんて。こちらもこちらで不憫だ。


 お父様はルイの言葉を受けて、勿体ぶるようにこの場にいる人間を見渡し、皆が自分に注目していることを確認すると、何故か私の方を見て微笑んだ。


「喜びなさい、グレース。お前の婚約が決まったよ」



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