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悪役令嬢はお姉様と呼ばれたい!  作者: 春乃春海
第二章 悪役令嬢は次期当主を目指す
25/70

24. 義弟は攻略対象キャラ


 ゲームの設定で、ルイはミラを陰ながら見守る義弟というキャラクターだった。

 ゲームがスタートする数年後の姿は今よりもぐっと背が伸び、素敵な男の子となるのだが、他の攻略対象キャラと比べて、体の線が細く、どちらかというと可愛い系の美少年へと成長する。

 性格は大人しく、自分の母親に虐められているミラを表立って助けられず、泣いているミラを影で慰めることしかできないでいた。そんな自分を歯痒く思っていおり、ミラに対して負い目を感じているという設定だった。


 彼のルートでは、そんな自分に自信のないルイが母親や意地悪な義姉グレースからミラを守り、恋に発展していく話となる。

 

 今までただの弟と思っていたルイに守られ、次第に恋に落ちていく様がキュンキュンしてきちゃうのよね。

 ミラを陥れようと画策するパトリシアとグレースの悪事を暴き、二人を伯爵家から追い出し、見事二人は結ばれるのだ。

 うん、うん。なんてスカッとするストーリーなのだろう。


 ……………………って、あれ?


 ミラがもしルイを選んだら、私、伯爵家から追い出されちゃうの???


 ええええ? そんなの嫌っ!

 折角、やる気を出してこんなに頑張っているのに、そんな展開ダメよ!

 絶対嫌っ!

 ミラを守って伯爵家を安泰に導くのは私の役目よっ!

 ってことはルイは私の敵になるのかしら?


 いやいやいや、待て待て、私。

 それはあくまでゲーム内の悪役令嬢となったグレースなだけで、今の私は違う!

 妹激ラブの素敵なお姉様だもん!

 可愛い妹を虐めるなんて卑劣なマネはしないもんっ!


 だ、大丈夫よね?


 不安が拭いきれない私は思わず黙り込んでしまい、その様子に気づいたミラが声をかけてきた。


「お姉様? どうかされました?」

「い、いいえ!? 何でもないわ」


 いけない、いけない。

 可愛いミラに心配かけちゃダメよ。

 

 よし。

 それならば、ルイと仲良くしておこう!

 そうすれば少なくとも伯爵家を追い出されるなんてことにはならないはずだ。


 私は決意を新たにすると、ニッコリとスマイルを作り、ルイに向き合った。


「ルイはお屋敷には慣れました?」

「えっと……少しは。でも、広くて迷子になりそうです」


 ルイが照れたように答えると、隣でミラが頷く。


「私も初めて来た時にはお屋敷の広さにビックリしましたもの。よく迷子になりましたわ」


 ミラの言葉にルイは少し安心したようにホッと表情が和らげた。


 そうね、なんだかんだでミラもこの屋敷に来てまだ一年経っていないわけだし、ルイの少し先輩って立場になるのかしら?


「皆さん優しくしてくださって、助かっています」

「そう? それはよかったわ。でも、ずっと勉強ばかりで大変ではなくて? 本当はもっとお屋敷の外とか領内を案内したいと思っているのよ。パトリシア様もそんなに勉強を急がなくてもいいのね」

「勉強は大変ですけど、僕も早く伯爵家に馴染みたいので。あ、でも、領地を巡る際は声をかけて下さい。僕も外に行きたいです」

「ふふ。そうね。パトリシア様にお願いしてみましょうか」

「お姉様!その時は私も一緒に行きます」

「もちろんよ。みんなで行きましょう」

「わぁ。何だか楽しそうですね」


 やっとルイの表情から緊張が取れ、少し顔色が明るくなった。

 うんうん。パトリシアはあれだけど、ルイは良い子そうじゃない。

 とても素直で勉強熱心だし、早く馴染もうとしているところは好感が持てるわ。

 しかし、大人しそうなルイと派手なパトリシアはあまり似ていないようだ。内面に然り、外見に然り。

 私はふと気になって訊ねてみた。


「ルイはあまりパトリシア様に似てないわよね。パトリシア様はなんていうか派手な感じだけど、ルイは柔らかい雰囲気ですもの」

「……はは。それは、よく言われます」

「髪色はお父様譲りかしら?」

「いいえ。お母様譲りです」

「えっ?」


 パトリシアの明るい茶色の髪を思い出し、私は首を傾げる。


「失礼ながら、お嬢様。奥様も黒髪ですよ」


 ルイの代わりに答えたのはイルダだった。


「奥様は鬘を使用されておりますので。地毛はルイ様と同じ綺麗な黒髪ですよ。ウィッグをたくさん持っていらっしゃるようなので、恐らくこれから頻繁に取り替えられた姿を見る機会がありましょう」


 パトリシアが衣装持ちであることは聞いていたが、まさか鬘もだったとは。

 マリアたち使用人の話によると、パトリシアが屋敷に持ち込んだ服や帽子、アクセサリーは膨大な量で、パトリシアの部屋だけに収まりきらず、隣の部屋を丸々衣装部屋に作り変えたらしい。

 私はその様子を見ていないが、使用人は大変だったそうだ。

 

「お母様はたくさん鬘を持っているんです。服もたくさんあって、毎日違うドレスを着て、お化粧をして、色んな姿に変わるんですよ」


 ルイは楽しそうに語る。

 恐らく純粋に言っているのだが、彼女の今までの経歴を知っている私は何とも言えなかった。後ろに控えているマリア達も微妙な表情をしている。

 そしてそれはパトリシアの浪費家の予兆を感じ取れる発言でもあった。

 

「まぁ、それは見てみたいです。ドレスの着せ替えなんて楽しそう」


 夢見る女の子らしく、ミラがうっとりと言う。

 

 ああ。純粋なミラは可愛いわ。

 貴女はいつまでもそのままでいてね。

 私は可愛い妹を生暖かい目で眺め、相槌を打つ。


「そうね。私たちもある程度ドレスを持っているけれど、着れなくなったドレスもあるからそれ程多くはないものね」


 本当、育ち盛りの身体が憎らしい。

 もう少し成長して身長が止まれば、流行り廃りはあるけれど、今のように頻繁にドレスを買い足す必要はなくなるが、今の私たちはドレスに然り、靴に然り、毎回結構な出費となっている。


「……お二人も、たくさんドレスをお持ちなのですか?」

「ええ、それなりにね」


 興味深そうに目を向けるルイに私はおやと首を傾げる。


 ーー先程の発言といい、もしかしてドレスとか装飾に興味があるのかしら?


 確かゲームでは芸術の才能に秀でて、絵や音楽などが趣味だったと記憶している。

 ファッションもその部類に入るし、もしかして、ゲームでは描かれていなかったが洋服にも興味があるかもしれない。


 ふむ。これは親睦を深められるチャンスかもしれない。


「良かったら、見てみる?」

「よろしいのですか!」


 私の提案に、ルイは身を乗り出して目を輝かせた。



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